『ウォール街のランダム・ウォーカー』
2006.8.6 http://otsu.seesaa.net/article/21985368.html
を書いたバートン・マルキールの本だということで、興味を持って読みました。
しかし、全部をマルキールが書いたわけではなく、著者としてはパトリシア・テイラー、梅建平、楊鋭という3人の名前も挙がっています。実際、このような中国株投資の本を(アメリカ人が)1人で書くのは大変だったことでしょう。こういう本の常道ですが、表紙や背表紙には、有名人の著者の名前を大きく書き、後の3人の名前は小さく書いています。奥付は「B・マルキールほか」という表記です。これでは他の3人がかわいそうです。平等に扱うのが当たり前だと思います。
第1部は「中国はまだまだ進化する」ということで、経済を中心とした歴史的な流れの概説です。なかなかおもしろく読みました。乙の不勉強のせいで、世界史の時間に勉強して以来、こんなまとまった記述はあまり読んだ記憶がありません。驚異の成長もある一方で、リスクもいろいろあり、それをきちんと記述しています。
第2部は「中国株に乗らない手はない」ということで、中国株の超楽観論が展開されます。これぞ投資本といったところでしょう。
p.134 B株は外国人用ですが、もともとは中国本土以外に住む中国人投資家がねらいだったとのことで、これは知りませんでした。
p.152 中国株A株の非効率性を述べています。統計的検証の結果だそうですが、乙はこの意見に賛成です。
p.153 中国では上場企業の89%が粉飾決算をしていた(1999年の財務省の調査結果)とのことで、まさに口あんぐりの結果です。これでは、何があっても不思議ではありません。
pp.161-164 中国A株では、プロのファンドマネージャーは市場平均を一貫して上回るとのことです。非効率な市場ならではの現象でしょう。pp.164-165 のように、H株は効率的だそうですから、乙のようにH株に投資している人間にとってはほっとする結果です。
pp.171-200 中国株の超楽観論が語られます。こういうのを読んでいると、中国株に投資したくなります。p.172 には、中国の高い経済成長は、必ずしも中国株の高いリターンにはつながらないという話が出てきます。気をつけるべきところです。乙はこの点、以前は誤解していました。
第3部は「マルキール博士の中国株戦略」で、具体的な投資方法が説明されます。世界分散投資の一部として中国株を組み入れることを説き、時間の分散(ドルコスト平均法)や、年齢などに応じた債券と株の比率なども踏まえ、真っ当な投資とはこういうものかと考えさせられます。
中でもおもしろいのは、p.250 で中国A株の投資はアクティブ・ファンドでいいと述べているところです。p.259 では、香港ならばインデックス投資もありと述べており、市場の種類(効率性)によって取る戦略が違ってくるとしているところは興味深かったです。
p.323 では、インデックス ETF として GXC をすすめています。もう一つは EWH です。ほほう、そうですか。まあ、あまり詳しく書くとこの本を読む必要がなくなりますからやめておきましょう。
ともあれ、本格的な中国株の投資本です。
乙は、こんなことも知らずに、本屋さんで買ってきた中国株の本を読み、中国株を買い付けたのでした。
2006.4.17 http://otsu.seesaa.net/article/16667817.html
その後、個別銘柄よりも ETF のほうがいいのではないかと考えるようになり、
2006.11.3 http://otsu.seesaa.net/article/26682914.html
2006.11.4 http://otsu.seesaa.net/article/26736371.html
2006.11.5 http://otsu.seesaa.net/article/26796311.html
2006.12.12 http://otsu.seesaa.net/article/29466140.html
保有する中国株をユナイテッドワールド証券から HSBC 香港に移管し、
2007.1.13 http://otsu.seesaa.net/article/31320494.html
2007.1.14 http://otsu.seesaa.net/article/31372057.html
2007.1.20 http://otsu.seesaa.net/article/31735618.html
個別株から ETF に乗り換えました。
2007.10.23 http://otsu.seesaa.net/article/62004596.html
こんな乙の中国株投資の変遷を考えると、もっと早くこの本に巡りあっていれば、違う考え方になったのにと思いました。しかし、2008年3月刊行では、それ以前に巡りあうことはなかったはずですが。
ともあれ、投資の基本原則を再認識させてくれ、その中で中国株投資をどうしたらいいかを考えさせてくれる本でした。
ラベル:バートン・マルキール 中国株
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今回の中国の話は、大変参考になりました。
もしかしたらご覧になったことがあるかもしれませんが、冒険投資家ジム・ロジャーズが書いた、「中国の時代」という本が、6月に日本で出版されています。
もし興味がありましたら、試しに読んでみてください。
ひと味違った面白さがあるかもしれません。
また、「ブラジル 巨大経済の真実」
著:鈴木孝憲
日経新聞出版社
もおススメします。 資源エネルギーと農業大国と知られながらも、実質成長率が3.1パーセントしかない理由なとが書かれています。ブラジルの通貨であるレアルも、諸事情で高くなっており、その背景もかかれています。