2006.4.29 http://otsu.seesaa.net/article/17180574.html
乙は、2005年10月に購入したのですが、今のところ、基準価額は4割ほど上昇していますし、それ以外に分配金が 14% ほど出ているというわけで、大変な好成績です。
最近、第19期(決算日:2008年5月15日)の運用報告書を送ってきましたので、読んでみました。こういうのを読むのもなかなかおもしろいものです。
ネット内では
http://www.jpmorganasset.co.jp/fund/info/832000/pdf/report_080515.pdf
においてあります。
PDF ファイルを読むのもいいですが、紙で送られてきたものを読むのもいいものです。電車の中などでも読めますし、ボールペンで書き込みながら読めます。
さて、p.1 には、最近5期の運用実績が出てきます。基準価額の推移を見ると、ベンチマークの MSCI オール・カントリー・ファーイースト・インデックスを数%上回る成績が続いてきたのですが、19期は -19.7% ということで大きくマイナスになっています。ベンチマークが -16.4% ですから、ベンチマークに負けています。しかし、まあ、過去にずっと好成績を続けてきたのだから、許してあげようという気になります。
なぜ、今期は成績がベンチマークよりも低迷したのでしょうか。答えは p.2 に書いてあります。「国別配分効果では、主として中国のオーバーウェイトがマイナス寄与となりました。」ということです。中国株に多めに割り当てていたから、中国株の値下がりで大きな損失を出したというわけです。これはこれで理解できますが、これが「要因分析」のところに書いてあることに違和感がありました。実に表面的分析です。投資家の立場からは、こんなことを知りたいのではありません。なぜ中国株に多めに投資したのかが知りたいのです。目論見が外れたことは、まあ、しかたがないでしょう。誰も株価の上下はあてられませんからね。しかし、中国株をオーバーウェイトしたのは、運用会社の判断ですから、そこのところをもっと書いてもらいたかったです。
ところで、19期は成績が振るわなかったわけですが、15期から18期は、ずっとベンチマークを数%ずつ上回っていました。アクティブ・ファンドというのは、そんなに簡単にベンチマークを上回ることができるものなのでしょうか。
p.6 の配当等収益のところを見ると、受取利息がわずかに計上してあるだけで、かなりあるはずの配当がまったく書かれていません。「おや?」と思って探してみると、秘密がわかりました。運用報告書の後半(p.7 以降)のマザーファンドのところです。p.15 には、受取配当金が 788,414,178 円と書いてあります。純資産総額は同じページにあるように、49,240,480,493 円ですから、受取配当金は 1.6% ほどにあたるわけで、まあ、こんなものでしょう。配当金はマザーファンドのほうで受け取っていたのです。
マザーファンドの成績がどうなっているかを見てみると、p.7 に書いてあります。過去5年間の成績は、ほぼベンチマーク並みです。ベンチマーク並みだからいいなどと考えてはいけません。これは、株式ファンドですから、毎年 1.6% ほどの配当金があるのです。しかし、信託報酬が 1.6% かかるので、相殺されて、成績はベンチマーク並みになっているということになります。つまり、アクティブに売買していても、成績はいっこうによくないのです。むしろ、信託報酬分だけベンチマークを下回っているというべきでしょう。
なぜ、ベンチマークを上回れないかを見てみましょう。
p.4 には、1万口当りの費用明細が書いてあります。信託報酬 196 円、売買委託手数料 35 円、有価証券取引税 23 円、保管費用 11 円で、合計 265 円のコストがかかっています。やはり、信託報酬が大きいのです。1万口当たりで、だいたい基準価額が 25,000 円くらいですから、0.784% ほどかかります。しかも、このファンドでは1期は半年ですから、1年ではこの2倍で、1.6% ほどかかるわけです。目論見書で信託報酬が 1.6% と書いてありましたので、間違ってはいないわけですが、やはり、信託報酬というのはコストの中で大きいものなんですね。
さらに、売買手数料 35 円と有価証券取引税 23 円がかかっています。これもバカにできません。
p.4 の「親投資信託の株式売買金額の平均組入株式時価総額に対する割合」を見てみると、0.94 とあります。これは、半年間でほぼすべての保有株が入れ替わってしまうということです。けっこう激しい売買です。マザーファンドについては、p.11 に記載がありますが、この値が 1.99 です。マザーファンドは年1回の決算ですから、半年決算のベビーファンドの2倍の売買をしていることになります。
こうして、このファンドは、いかにもアクティブ・ファンドらしい激しい売買をしていることはわかりましたが、結果的にどうだったかを見てみると、ベンチマーク並みということですから、はっきり言ってファンドとしても売買は奏効していないというべきです。
p.4 では、親投資信託受益証券の設定、解約状況が書かれていますが、この半年間で設定よりも解約のほうが多くなっています。つまり、資金が流出しているわけで、投資家の皆さんは、けっこう細かくファンドの成績をチェックしているのでしょうかね。
将来的にやや不安を感じさせる決算内容でした。
ベンチマークをやや上回っている場合でも、それが配当金のためだとすると、決して運用会社の運用がうまいわけではありません。この点は、当然ですが、改めて認識しました。
2009.4.19 追記
この話の続きを
http://otsu.seesaa.net/article/117740530.html
に書きました。
よろしければご参照ください。
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