朝倉氏の前著『投資信託選びでいちばん知りたいこと』
2006.5.7 http://otsu.seesaa.net/article/17479870.html
に深く関連する内容となっています。
コア投信として、前著で述べたような日本株、外国株、日本債券、外国債券の四つに投資した上に、サポート投信としてさらにいくつかの種類の投信を保有する場合に、どんなことを考えておいたらいいかを述べたものです。
そこで、本書では第3章「サポート投信はこう選ぶ!」(pp.96-169)が中心的な内容ということになります。はっきりいえば、この74ページ分だけ読めばもう十分です。
p.101- 国際 REIT 投信の選び方では、低コスト、高リターンということだけでなく、広く分散されていることを基準にしています。
p.127- コモディティ投信の選び方では、低コスト、高リターンに加えて、参照指数が何であるかを基準にしています。
p.143- 新興国株式投信の選び方では、分散投資、償還期間、運用・調査体制を基準にしています。ただし、p.158 では、いきなりファンド・オブ・ファンズの話になってしまい、実際のコストはもっとかかるのではないかという疑問がわきました。また、ファンド・オブ・ファンズで、調査体制などが判断できるのかという点が疑問に思いました。
p.160- では、ヘッジファンドの選び方というのもありますが、ここでは省略します。
さて、このように、いくつかのサポート投信について、具体的に調べ方の手順なども示しているのですが、良くも悪しくも、モーニングスターのサイトを使うようになっています。朝倉氏がモーニングスター株式会社の代表取締役 COO である以上、それはしかたがないことかと思います。
しかし、そのために、本書には書かれていない大きな問題があるのです。それが ETF です。乙は、ETF も投資信託の一種であると思いますし、それなりにメリットがあると思いますが、本書では扱われていません。pp.153-154 あたりでは、いくつかの新興国株の投信の比較を行っていますが、ETF(ここではその中の EEM を取り上げるべきでしょうが)も加えて比較すれば ETF のほうが有利という結果になるのではないでしょうか。
第4章「経済がわかる投資家になる」では、経済の大局がわかる投資家になろうという趣旨で、さまざまな経済ニュースと投資スタンスの関係などを論じているのですが、乙は、この章の趣旨がよく理解できませんでした。
こうして経済の動きがわかったとして、では具体的にどうしたらいいのでしょうか。
たとえば、p.174 では、先行きの相場を予想して、保有する投信を頻繁に売買したり、入れ替えたりしてはいけないと説きます。だったら、第4章の記述全体が不要なのではないでしょうか。
第4章は、全体として、投信の基準価額の上下を他の事象と関連付けて説明しようとしています。だとしたら、p.174 の態度と矛盾するように思えます。
なお、p.178 では、GDP と株価のグラフを重ね合わせて「同じような動きをする」としていますが、このグラフを見ても、乙は似ているとは思えませんでした。特に、特定の数年間のところに楕円形を書いて「動きが似ている」と書いていますが、そういう態度はよろしくないと思います。もっと長い期間に対して相関係数でも計算しておいたほうが説得力があったでしょう。
本書は、いきなり読むべき本ではありません。まずは前著を読んで、次に読むべきものです。
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