NIKKEI NET にも一部収録してあります。
http://www.nikkei.co.jp/news/past/honbun.cfm?i=AT2C04022%2004072008&g=E3&d=20080704
2007年度の運用利回りが -6.41% となったというニュースです。
新聞の本紙には、その先があります。実は、そこが問題です。以下、一部引用します。
ただ中期的に見ると、日本の公的年金の運用成績は海外の年金基金に比べて見劣りする。06年度までの直近5年の運用成績を比較すると、日本の 3.5% に対しカナダ 10.4%、オランダ 7.2%、ノルウェー 6.9% だった。
日本の運用利回りが海外に比べ低いのは、債券運用比率が6割超と突出して高いためだ。債券への過度の傾斜は逆にリスクが大きいとの指摘もある。
国内外の株や債券という伝統的な資産のほかに、商品(コモディティー)や不動産など代替資産に分散投資することによって運用を効率化すべきだとの声は多い。
乙は、この記事を読んで、おやおやと思いました。天下の日経新聞がこんな記事を載せるのですね。定期購読を止めようかという気分になります。
第1段落:日本と外国の年金の運用成績を単純に比較することは間違っています。国ごとに金利が違うのです。したがって、年金の運用成績は各国の政策金利と比べて見ていくべきです。日本は直近5年間といえば、低金利が継続していました。ほぼ 0% と考えていいように思います。その中で 3.5% の利回りを出したことは、政策金利と比べて +3.5% ということで、なかなかの成績です。
カナダの政策金利は、どれくらいだったのでしょうか。
http://www.kanetsu.co.jp/forex/interest_rate/BOC.html
http://www.fxprime.com/service/library/interest_rates/canada.html
あたりで見てみると、直近5年間では 3% くらいでしょうかね。とすると、公的年金の運用成績は +7.4% ということになります。日本とカナダの差は、たかだか2倍しかありません。
ユーロの場合も、
http://www.kanetsu.co.jp/forex/interest_rate/ECB.html
http://www.fxprime.com/service/library/interest_rates/eu.html
直近5年間で 3% くらいでした。とすると、オランダの場合で +4.2% で、日本と大差はありません。
ノルウェー(クローネ)の場合は、
http://www.traderssec.com/forex/currency/nok.html
金利の高低が激しく、ちょっとわかりにくいですが、直近5年を平均すれば 3% よりは多くなりそうです。3% としても、運用成績は +3.9% で、日本と大差はありません。
日本は、低金利政策によって、年金の運用利回りも下がらざるを得ないのです。
第2段落:債券の運用比率が高いのは、リスクを減らして安定的に運用するためで、6割は大きすぎるようにも思いますが、なるべく年金資金を毀損することは避けたいという考え方からすれば、当然の比率でしょう。6割という比率が「過度の傾斜」と言えるのでしょうか。乙はそうは思いません。
第3段落:商品や不動産への投資をすすめるかのように読めますが、それは問題でしょう。何といっても年金資金が大きすぎます。ざっと 100 兆円あります。その中で、ほんの数%でも、商品や不動産に回ったら、その分野は資金がジャブジャブ状態になるのではないでしょうか。計算上は価格が上がってうれしい限りでしょうが、売るに売れない状態になるでしょう。それだけの資金が逃げ出したら、商品も不動産も暴落するはずです。年金資金は大きすぎる故に、商品や不動産では運用できないように思います。株や債券ならばこの規模の資金を飲み込んでも大丈夫です。
日経新聞は、あまりにも短絡的な記事を書くものです。こんなことで経済紙を名乗っていていいのでしょうか。
NIKKEI NET にもあった町村信孝官房長官の発言「基本は株価の動向で決まる。そう慌てる必要もない」というのは、正論です。(6割を占める)債券での運用は、どうせ少しずつしか成績は上がらないわけですから、運用成績を左右するのは株価ですし、そのうち株価が上がるでしょうから、じっとしていれば、運用成績は改善されるはずです。
ブログの記事でも、この話が取り上げられていました。
http://blogs.yahoo.co.jp/aki10292002/22315615.html
http://fund.jugem.jp/?eid=720
http://fundstory.blog87.fc2.com/blog-entry-297.html
http://blogs.yahoo.co.jp/ifajapan_links/53954747.html