海外投資に関する徹底的な案内書が出たというべきでしょう。海外投資を行っている人、これから行おうという人は、ぜひ1冊を手元に置くべきです。
前著:橘玲(2008.3)『黄金の扉を開ける賢者の海外投資術』ダイヤモンド社
2008.5.29 http://otsu.seesaa.net/article/98372824.html
では、橘玲氏の単独名だったのですが、今回は「海外投資を楽しむ会」も共著者として入っています。乙が想像するに、本書は、橘氏だけによるものではなく、16,000 人もの会員数を誇る「海外投資を楽しむ会」が執筆に携わっているということでしょう。事実、本書に書かれているようなことを一人で調べ上げるというのは大変な苦労だと思います。一方、たくさんの人の協力があれば、一人ひとりの知っている範囲は狭くても全体としては「集合知」の原則が働き、網羅的な記述が可能になります。Wikipedia のような考え方です。
本書は、金融商品の紹介に重点をおいていて、この1冊があれば、海外投資に必要になるさまざまな商品が一通りわかりますし、どういうものに投資すればいいかもわかるようになっています。
以下、乙がおもしろく思ったところを中心に、いくつかコメントします。
p.23 ETF や金融先物を使ったインデックス投資では、日本株の場合、TOPIX よりも日経225のほうがいいと述べています。日経225のほうが取引量が多いためだというわけです。山崎元氏などは、日経225が構成銘柄の入れ替えがあって、指数の連続性に問題があることと、その際に、わずかながら裁定取引があって長期保有している投資家が少しだけ損をすることを述べています。どちらがいいかは悩ましい問題ですが、橘氏のような先物活用派は、日経225ということになるのでしょうか。
p.80 ブル型ETF とベア型ETF にどんな特徴があるかを説明していますが、これはなかなかおもしろかったです。乙は、それぞれの存在はすでに知っていましたが、自分で売買したことはなく、その特性についても考えていませんでしたので、新鮮な指摘として読みました。
p.81 人民元 ETF (CYB) があるということを初めて知りました。乙は、人民元投資をどうしたものか、わからないままに過ごしてきました。たとえば、ブログでは
2008.7.19 http://otsu.seesaa.net/article/103164638.html
のような関連記事を書きました。しかし、長年の疑問がこれで氷解しました。今の乙は、投資を控えている時期なのですが、
2008.6.8 http://otsu.seesaa.net/article/99784901.html
今後、機会があれば、この ETF を試してみようと思います。
p.86 から ETF の一覧が始まります。とにかく「すごい!」のひとことです。こんな資料は見たことがありません。これだけでも、本書の価値があります。
ただし、本書には残念なこともありました。ミスプリがかなり多いのです。今までの橘氏の著作では、ほとんど感じなかったのですが、どうしたことでしょう。
ざっと一読したときに気が付いたものを以下に指摘しておきます。これで全部のはずはありませんから、丹念に読めば、この数倍はあるものと推定します。気のせいか、英語関係のミスが多いように思います。
p.39 2行目 Grobal→Global
p.39 7行目 DR→GDR
p.40 D Noth→North
p.108 2行目 Exchanged→Exchange (p.113 下から4行目は正しい)
p.110 下の方 iShares の読み「アイシュアーズ」→「アイシェアーズ」
p.111 4行目 INRG のところ FESE→FTSE
p.111 下から4行目 IPRP のところ FEST→FTSE
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