2008.8.25 http://otsu.seesaa.net/article/105303133.html
損切り・利食いは、損切りを大きなレベル(たとえば -20%)で、利食いは小さなレベル(たとえば +10%)で行えばいいという結論に達しました。
ここでの問題は、仮に損切りを利食いの2倍の水準とした場合でも、[-20%, +10%] という場合と、[-10%, +5%] という場合があるということです。この問題について、考えてみましょう。
正規分布表では、Z という標準得点に基づいて分布(面積)が決まっています。
そこで、Z の値を少しずつ動かしながら、「Z の値以上の面積」と「Z の2倍以上の面積」を比べてみることにしました。
結果は、以下の通りです。
Z | Z確率 | Z*2確率 | Z比率 | Z*2比率 |
0.1 | 0.4602 | 0.4207 | 52.24% | 47.76% |
0.2 | 0.4207 | 0.3446 | 54.97% | 45.03% |
0.3 | 0.3821 | 0.2743 | 58.21% | 41.79% |
0.4 | 0.3446 | 0.2119 | 61.92% | 38.08% |
0.5 | 0.3085 | 0.1587 | 66.03% | 33.97% |
0.6 | 0.2743 | 0.1151 | 70.44% | 29.56% |
0.7 | 0.2420 | 0.0808 | 74.97% | 25.03% |
0.8 | 0.2119 | 0.0548 | 79.45% | 20.55% |
0.9 | 0.1841 | 0.0359 | 83.68% | 16.32% |
1.0 | 0.1587 | 0.0228 | 87.44% | 12.56% |
1.1 | 0.1357 | 0.0139 | 90.71% | 9.29% |
1.2 | 0.1151 | 0.0082 | 93.35% | 6.65% |
1.3 | 0.0968 | 0.0047 | 95.37% | 4.63% |
1.4 | 0.0808 | 0.0026 | 96.88% | 3.12% |
1.5 | 0.0668 | 0.0013 | 98.09% | 1.91% |
1.6 | 0.0548 | 0.0007 | 98.74% | 1.26% |
1.7 | 0.0446 | 0.0003 | 99.33% | 0.67% |
1.8 | 0.0359 | 0.0002 | 99.45% | 0.55% |
1.9 | 0.0287 | 0.0001 | 99.76% | 0.24% |
2.0 | 0.0228 | 0.0000 | 99.87% | 0.13% |
Z が 0.1 のような分布の中心に非常に近いところでは、「Z の値以上の面積」と「Z の2倍以上の面積」がほとんど同じ値になってしまいます。株式でいえば、1% 上がったら利食い、2% 下がったら損切りというようなものです。こうすると、両者の起こる確率がだいたい同じになります(厳密にいえば前者の方が後者よりも少し確率が大きいですが)から、全体として損をすることになります。逆にいえば、2% 上がったら利食い、1% 下がったら損切りとすれば、(手数料を無視すれば)儲かると思います。
Z が分布の中心から離れていくと、「Z の値以上の面積」と「Z の2倍以上の面積」の差が大きくなっていきます。Z=0.6 のところで、「Z の値以上の面積」と「Z の2倍以上の面積」が約2倍違ってきますので、このあたりが境界線です。これよりも Z が大きい場合は、「Z の値以上の面積」が「Z の2倍以上の面積」よりも2倍以上大きくなりますから、儲けが出ることになります。驚いたことに、上の表からわかるように、Z が大きくなればなるほど、両者の面積の差が大きくなります。
ということは、損切り・利食い水準を [-20%, +10%] とするよりは、 [-40%, +20%] とするほうがよいということです。
ただし、このような大きな幅で損切り・利食い水準を決めると、そのようなレベルに達しないことが多くなり、損切りも利食いもしない(できない)状態、すなわち保有したままになることが増えます。Z=1.0 のところでも、「Z の値以上の面積」が 0.1587、「Z の2倍以上の面積」が 0.0228 ですから、合計しても 0.1815 にしかならず、85% は保有したままということで、儲けにつながらないわけです。損切り・利食いの水準を決める場合は、このことも勘案しながら、妥当な水準を決定しなければなりません。これはなかなかの難問です。
ついでにいえば、株価の変動の程度(標準偏差)を求めることも難しい問題です。個別の銘柄ごとに相当に違ってきますし、期間をどれくらい取るかでも変わってきますから、けっこう大変です。
ともあれ、株の売買において、損切り・利食いのレベルをどう設定すればいいかについて、乙なりの結論が出ました。
株価がランダムに(その確率が正規分布を描くように)変動するものと仮定した場合の話です。
一つは、+2% で利食い、-1% で損切りというようにごくごくわずかの差で手仕舞いする方針です。両者の起こる確率はだいたい似たようなものですから、利食い水準を損切り水準よりも高めに設定することで確実に儲けることができます。もっとも、これは非常に頻繁に株の売買を行うことにつながりますから、手数料がかなり多額になることが予想され、本当に儲けられるかどうか、よくわかりません。これはデイトレードの論理(の一つ)でしょう。
もう一つは、+10% で利食い、-20% で損切りというような、大きな差で手仕舞いする方針です。後者が起こる確率は前者の半分よりもやや小さいですから、これも儲けることができます。ただし、この場合、標準偏差を考慮して、利食い水準を標準偏差の6割よりも大きい水準に設定し、損切り水準をその2倍とするのがいいということになります。
私も損切りの検証については、色々と検証してみました。
http://victoriousystemtrade.blog58.fc2.com/blog-entry-204.html
損切りの有効性について、私は手数料のことを抜きにしても否定的な考えですが、ここではそれは抜きにして検証方法についてだけコメントします。
本文中に
+10% で利食い、-20% で損切りというような、大きな差で手仕舞いする方針です。後者が起こる確率は前者の半分よりもやや小さいですから、これも儲けることができます。
とありますが、これだけでは儲けることができるとは言い切れないように思います。(両者の起こる確率しだいですが)
電卓で計算してみれば分かりますが、1回の-20%の損失は+10%の利益2回では埋め合わせできないからです。
0.8×1.1×1.1=0.968
1回の-20%の損失の埋め合わせには11.804%の利益2回分が必要になります。
0.8×1.11804×1.11804≒1
同様に
-1%の損失を出した後、+1%の利益を出した場合(順番は逆でも同じ)
と
-10%の損失を出した後、+10%の利益を出した場合(順番は逆でも同じ)
でも得られる結果はまるで違ってくるので、これを同列に比較することはできません。
同一の資金で売買を繰り返す取引を想定した場合は、算術平均ではなく、幾何平均を使って計算する方が妥当だと思います
シミュレーションの考え方はいろいろあると思います。
何回かの取引を順番に行う場合は、CHARO さんのおっしゃる通りですが、一度に 100 銘柄購入して、ある規則で売買して終わるような並列型の場合は、直列型とはちがった考え方になります。
乙が計算したのは、後者の場合ということです。
なお、お示しになった損切りの記事を一通り拝見しました。非常に興味深いものだと思います。
こういう考え方を個人投資家がもっとしなければならないと思っています。自分で納得して戦略を考えるということです。
それにしても、本屋さんで見かける株の本はいいかげんなものが多いですね。
まあ、そんなことがいえるようになったのも、ある程度の量の本とブログ記事(及びその他のネット内の記事)を読んだからなのですが。