「外こもり」というのは、「目的もなく海外に一都市にこもって、ブラブラしていること(人)」(p.12)だそうです。今や、そういう人がかなりたくさんいるようです。この本は、そういう人々の日常生活を描いた本です。
本書はタイ・バンコクでの外こもりを中心に記述しています。著者自身もその道10年以上という外こもりです。物価の安い国で、ブラブラするということはどういうことか、要領よくまとめて書いてあります。バンコクで外こもりをするならこの1冊で間に合いそうです。
乙は、老後に、海外で生活するかもしれないと思っています。その際、仕事をするつもりはないので、どんな生活になるのか、今ひとつピンときません。そこで、その参考になればと思ってこの本を読んでみました。
しかし、本書はどちらかというと読者として若い人を対象にしている場合が多く、娯楽などの面でもそういう方面の話が中心です。乙とは価値観がだいぶずれているような感じがしました。
乙は、タイ語を学ぶのもいいかなあなどと思っています。そういえば、ずっと前に(学生時代に)タイ語に関連したものを学んだことがありましたが、今やその内容はすっかり忘れています。老後に新しい外国語を覚えるのは厳しいのでしょうか、それともおもしろいものなのでしょうか。
ところで、外こもりでは生活費をどう稼ぐかという問題がありますが、それは「海外で稼ぐには」(pp.44-59)に記載されています。投資、アフィリエイト、バイヤー(個人貿易)、軽くアルバイト、日本への出稼ぎ、いっそ現地採用などと、さまざまなケースが書いてあります。残念ながら、どれもあまり儲かるようなものではありません。まあ、稼ぐというよりは、お金を使わないようにして生活するスタイルが外こもりの基本なんでしょうね。
それらの中でも、「投資」の部分が一番興味深かったのですが、残念ながら、乙の方針とは合いませんでした。本書中のネット証券やFX業者を見ても、全部日本国内の業者名しか書いてありません。p.46 では、「株や為替の取引業者は、日本に居住していない人の取引を認めないことが多いので、投資をする人は、長期に外こもる場合でも、日本に住民票を残した方が良いかもしれません。」と述べています。これでは、長期滞在といっても日本から完全に離れているわけではないということになります。いつかは日本に帰ってくることを前提にしているということですし、海外にいながら、住民票が日本にあるということは、やはり日本に片足を突っ込んでいる状態ということになります。
乙は、せっかくタイにいるなら、タイで(バーツで)投資するとおもしろいのではないかと思うのですが、どうでしょうか。タイの銀行や証券会社の事情は何も書いてありません。タイの金融機関では不安だという場合は、シンガポールや香港がいいと思いますが、著者は、こういう方面が視野に入っていないようです。まあ、外こもりは資産が少ない人が行うもののようですから、もともと投資の世界とは別なのかもしれません。
p.46 では、相場で生活していく場合、100万円を元手に月5万円儲けることを目標にすることをすすめています。月 5% の利回りということは、年間利回りは 1.05の12乗ですから、79.6%になります。こんな利回りを継続的に出し続けるのは不可能です。そもそも元手が100万円ということでは、投資はしない方がいいでしょう。
資金が1000万円あれば、月5万の利益は可能かと思います。その場合の年間利回りは、1.005 の12乗で、6.2% ですから、こんなものでしょう。でも、1000 万円あったら、生活のしかたが「外こもり」とは違ってくるような気がします。
ちなみに、乙の老後は(海外に行くとしても国内で生活するにしても)少なくとも1億円〜2億円くらいを投資しながら生活したいと思っています。資産がこれくらいあれば、債券を中心に投資しても、年間数百万円くらいの運用益は期待できそうです。こういう生活は「外こもり」とはだいぶ違うように思いました。
本書は、ちょっと乙の期待とずれてしまいましたが、タイでの生活がどんなものかわかったので、それなりに興味深く読みました。
ゆうきさんのブログ
http://fund.jugem.jp/?eid=722
でも本書が取り上げられています。
もっとも、著者が行方不明という話もあり
http://fund.jugem.jp/?eid=778
そこのコメント欄によれば、死亡とか。
老後の一番の関心事は「治安」かもしれません。
【関連する記事】
- 香川健介(2017.3)『10万円からできる! お金の守り方教えます』二見書房
- 大江英樹、井戸美枝(2017.2)『定年男子 定年女子』日経BP社
- 天達泰章(2013.6)『日本財政が破綻するとき』日本経済新聞出版社
- 安間伸(2015.11)『ホントは教えたくない資産運用のカラクリ 投資と税金編 ..
- 橘玲(2014.9)『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方 2015』幻冬舎
- 橘玲(2014.5)『臆病者のための億万長者入門』(文春新書)文藝春秋
- ピーター・D・シフ、アンドリュー・J・シフ(2011.6)『なぜ政府は信頼できな..
- 小幡績(2013.5)『ハイブリッド・バブル』ダイヤモンド社
- 吉本佳生(2013.4)『日本の景気は賃金が決める』(講談社現代新書)講談社
- 川島博之(2012.11)『データで読み解く中国経済』東洋経済新報社
- 吉本佳生(2011.10)『日本経済の奇妙な常識』(講談社現代新書)講談社
- 野口悠紀雄(2013.1)『金融緩和で日本は破綻する』ダイヤモンド社
- 吉田繁治(2012.10)『マネーの正体』ビジネス社
- 午堂登紀雄(2012.4)『日本脱出』あさ出版
- ウォルター・ブロック(2011.2)『不道徳な経済学』講談社+α文庫
- 内藤忍(2011.4)『こんな時代を生き抜くためのウラ「お金学」講義』大和書房
- 瀬川正仁(2008.8)『老いて男はアジアをめざす』バジリコ
- 増田悦佐(2012.1)『日本と世界を直撃するマネー大動乱』マガジンハウス
- 藤沢数希(2011.10)『日本人がグローバル資本主義を生き抜くための経済学入門..
- きたみりゅうじ(2005.10)『フリーランスを代表して申告と節税について教わっ..
http://shadow-city.blogzine.jp/net/2008/09/post_b46d.html
上記以外にも多数記事があります。