この本を読もうと思ったのは、乙のブログ
2008.7.14 http://otsu.seesaa.net/article/102846453.html
のコメント欄で fenk さんからすすめられた(?)からです。
23ページにわたる参考文献や12ページもの索引まで付いていて、しっかりした本です。分量は、全部で 385 ページもあり、読むのもちょっと大変です。
著者のタレブ氏は、ヘッジファンドのトレーダーだった人で、今は大学教授という経歴の人です。回りのトレーダーなどをたくさん見てきた経験からこの本を書いたとのことです。この本の副題が内容を要約していると思います。トレーディングの世界では、理由もなく、たまたま(「まぐれ」で)儲かるような話がたくさんあるのですが、それを「自分の解析・分析・見通しが正しかった」と誤解する例が多いとのことです。
話の趣旨はわかるのですが、乙は、一読した後で、こんなにもページ数を使って議論するべきことか、かなり疑問に思いました。
参考文献が大量に挙げられており、タレブ氏が大変な読書家であることがうかがえます。また、注も充実しており、26ページにわたります。そして、これこれの問題については、誰それの本を読むようにと書いてあります。このような態度から、この本に出てくるさまざまな話は、単なる「お話」ではなく、根拠を持って語られているのだろうと思います。
しかし、そのようにきちんとしていることと、本がおもしろいかどうかは別問題です。乙は、注と参考文献に気が付かずに読み始めたのですが、いろいろな物事が(固有名詞を含めて)登場してきて、この本を読むには読み手側に大変な知識が要求されるなあと感じていました。もしかしたら、それらは(アメリカ人の)「常識」なのかもしれませんが、そのような常識を持っている人は少ないのではなかろうかなどと感じながら本を読み進めていました。最後の最後になって、注と参考文献に気が付いたので、この印象は乙の勘違いということがわかりました。それにしても、話題が広範囲に及ぶので、読み進めるのはそれなりに大変だろうと思います。
乙がちゃんと知らずにいて、この本で学んだこと(つまりはおもしろかったこと)もあります。
pp.156-160 あたりで、カール・ポパーの科学論が説明されています。乙は、ポパーの名前は以前から知っていましたが、その著作はきちんと読んでいませんでしたので、数ページでそのエッセンスを知ることができ、役立ちました。
pp.278-279 スキナーのハトの実験が説明されています。ランダムにエサを与えるような装置にハトを入れておくと、えさが出てくるタイミングでたまたまハトが行っていた動作があった場合、ハトがその動作とエサとを結びつけて、その動作を繰り返すというのです。乙はこの実験を知りませんでした。ハトですらそういう行動をするということは、動物の頭の中の基本的なところにそのような認識能力が埋め込まれていることになります。人間でも、「まぐれ」を「まぐれ」と認識することはきわめてむずかしいでしょう。
乙は、投資と関連する本として読みましたが、本書は、そのような投資本の領域を越えています。誰にでもお勧めできる本ではありませんが、統計学などの知識のある人にはおもしろいと思ってもらえるかもしれません。
ラベル:ナシーム・ニコラス・タレブ まぐれ
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『まぐれ』ちょうど読んでいます。
私には、難解ですね。もう少し、万人向けの読みやすい構成にできそうな気がしますが、著者はそれを望んでないのでしょうか?エッセンスはその通りだろうと思います。
確かに、難解といえば難解ですね。
読む側に事前の(関連)知識を要求する本といったところでしょう。
もう少し内容を削って、本質(といくつかの例)だけを残すようにすれば、読みやすいのでしょうが、著者は(いかにも学者なので)そういうのをいさぎよしとはしないのでしょうね。