このタイトルで、中身がわかってしまいます。つまり、手間をかけないでお金が勝手に貯まるしくみを作ってしまおうということですし、そのためには口座を四つに区分しようということです。
この本は、投資を始めたこともない若い人(想定読者は20代?)に、投資のしかたをやさしく伝授する本です。
コアとサテライトをわけ、コア部分では日本株、外国株、外国債券に投資する投資信託を毎月少しずつ買っていこうという内容ですから、書いてあることは正しい(望ましい)と思いますし、この方法でいいのですが、しかし、なぜこの方法でいいかということはあまり説明されていません。となると、初めてこの本を読む人は、本当にこれでいいのだろうかと疑心暗鬼に思うのではないでしょうか。その先は別の本で勉強しなければなりません。
乙は、ある程度の年齢になってから投資を始めたので、この本に書いてあるようなわけにはいきませんでした。30年前にこの本に出会っていたら、違った経験を積み重ねてきたことでしょう。
p.52 で、口座を四つに分けようという話が出てきます。考え方は理解できるのですが、乙自身は今までこういう区別をしてきませんでした。かなりいい加減に一つの口座で生活してきました。それが悪かったとは思いません。要は個人の生活態度です。乙は、もともと貧乏人ですから、ぜいたくをしないような考え方をしてきました。お金がかかるような趣味もありませんでした。若いころは投資もしてこなかったわけです。その経験からすると、無理に口座を四つに分ける必要はなく、本書に書いてあることも、考え方として受け止めておく程度でいいように思いました。
p.94 には、日本株式、外国株式、日本債券、外国債券の4資産の代表的な商品が列挙されていて、「コアに向くかどうか」という観点から○、△、×が付いています。外国株式のところの海外 ETF は△です。日本株式のところの ETF は○です。なぜ両者は違う判定になっているのでしょうか。外国債券のところの海外 ETF も△です。不思議な気がしました。先を読んでいくと、p.119 に、その説明の一部が出てきます。海外 ETF では、最低投資金額が大きいということと、毎月積立に対応していないことです。若い人(収入が多くない人)の場合は、最低投資金額の壁はけっこう高いかもしれません。毎月積立ができないこともその通りで、本書のコンセプトに合わないといえば合いません。乙は、海外 ETF を Interactive Brokers で購入していますが、積立ができない分、手間がかかりますが、自分の金を投資するのですから、それくらいの手間は当然と思っています。また、日本で購入するよりは手数料が安いですから、最低投資金額もそんなに高いとは思いません。個人の置かれた状況によって、適切な金融商品は違ってくるものだと思います。
本書は、分量的にそんなに長くなく、さらっと読めてしまいます。新書並みと言えばいいでしょうか。
乙には、記述が簡単すぎて不満が残る内容でしたが、20代の投資初心者にはおすすめできる本かもしれません。
【関連する記事】
- 香川健介(2017.3)『10万円からできる! お金の守り方教えます』二見書房
- 大江英樹、井戸美枝(2017.2)『定年男子 定年女子』日経BP社
- 天達泰章(2013.6)『日本財政が破綻するとき』日本経済新聞出版社
- 安間伸(2015.11)『ホントは教えたくない資産運用のカラクリ 投資と税金編 ..
- 橘玲(2014.9)『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方 2015』幻冬舎
- 橘玲(2014.5)『臆病者のための億万長者入門』(文春新書)文藝春秋
- ピーター・D・シフ、アンドリュー・J・シフ(2011.6)『なぜ政府は信頼できな..
- 小幡績(2013.5)『ハイブリッド・バブル』ダイヤモンド社
- 吉本佳生(2013.4)『日本の景気は賃金が決める』(講談社現代新書)講談社
- 川島博之(2012.11)『データで読み解く中国経済』東洋経済新報社
- 吉本佳生(2011.10)『日本経済の奇妙な常識』(講談社現代新書)講談社
- 野口悠紀雄(2013.1)『金融緩和で日本は破綻する』ダイヤモンド社
- 吉田繁治(2012.10)『マネーの正体』ビジネス社
- 午堂登紀雄(2012.4)『日本脱出』あさ出版
- ウォルター・ブロック(2011.2)『不道徳な経済学』講談社+α文庫
- 内藤忍(2011.4)『こんな時代を生き抜くためのウラ「お金学」講義』大和書房
- 瀬川正仁(2008.8)『老いて男はアジアをめざす』バジリコ
- 増田悦佐(2012.1)『日本と世界を直撃するマネー大動乱』マガジンハウス
- 藤沢数希(2011.10)『日本人がグローバル資本主義を生き抜くための経済学入門..
- きたみりゅうじ(2005.10)『フリーランスを代表して申告と節税について教わっ..
竹川です。
ブログに拙書『「しくみ」マネー術』を取り上げていただき、
ありがとうございます。
ご指摘にもありましたが、この通りやってほしいということではなく、
この本を参考に、自分が一番継続しやすいしくみを考えるきっかけになればと考えて執筆しました。
前著に比べてかなり初心者向きなので、
すでに投資をしている方にとっては物足りない部分もあるかと思います。
ただ、いっぽうで「貯蓄をするのが苦手」とか、「投資に関心がない」といった方も多いので、
そういう方たちが何らかのアクションを起こす一助になればと考えています。
著者ご本人からコメントをいただき、恐縮です。
また別の著書を取り上げることもあるかと思います。今後ともよろしくお願いいたします。