内容は、インデックス投資のすすめであり、ETF を使ってどのように行うかを具体的に説いています。
まともな本ですが、しかし、目新しさも少ないように感じました。オーソドックスな本となると、どうしてもこんな感じになってしまうのでしょう。
p.262 からの「おわりに」になって、時価総額に比例するのでないインデックス「ファンダメンタル・インデックス」の紹介があり、この考え方はおもしろいと思いました。今後はこういうインデックスに従う ETF なども登場してくるのでしょうね。
p.78 から、BRICs 投資に対する北村氏の考え方が書いてあります。証券会社などは、先回りして自己ポジションで株を買っておき、それを投資家に推奨することがあるそうです。これを「フロント・ランニング」というわけですが、BRICs はその例ではないかというのです。そうかもしれません。BRICs の最近の極端な株安を見ていると、さもありなんと思えてきます。
p.80 には、もしも、本当に数年後に伸びている国がどこか、わかるならば、その人や証券会社にとって最も合理的な行動は、その「秘密」を誰にもいわないことだとあります。そうしておいて、安値でたっぷり仕込んでから、「これからは○○○が儲かる!」といって価格を上昇させるというわけです。ポジション・トークですね。
こんなことから、今後上昇しそうな国や銘柄などをあてるアプローチは間違っていると主張します。この考え方は納得できます。
以下、乙が気になったことをいくつか書きます。
p.20 図表4では、原点と「先進国と日本の間」を通る直線が引かれています。そして、新興国・発展途上国がこれよりもハイリターンであることを示しています。過去5年あるいは過去10年の話です。しかし、この図は妥当なのでしょうか。もちろん、点と点の位置関係は、MSCI 指数などで計算した結果ですから、1点に決まるといえますが、元はといえば、それぞれの指数は、さまざまな国の株価指数を平均して計算しているわけですから、元の各国別の株価指数を基準にすれば「ばらつき」があるはずです。そうすると、こんなに単純に線が引けるということにはなりません。原点を通ると仮定して最小二乗法あたりを用いて計算することになるのでしょうね。複雑になりますが、それが正しいのではないかと思います。図表4は単純化しすぎのように思います。(単純化して示す意味もわかりますが。)
p.96 プラスからマイナスにいたる散布図が示されますが、軸のマイナス側に「-」が付いていません。まあ、なくてもわかりますけど、数学的な厳密さを欠いています。
p.205 から、基本のポートフォリオとして3種類が示されます。ポートフォリオについては「唯一絶対の正解はない」と述べています。それは正しいのですが、こんなふうに3種類示されて、あとは皆さんのお好きなようにといわれても、普通の読者ではちょっと判断しようがないのではないでしょうか。どれでもいいということであれば、せっかくインデックス投資を説いてきたのに、最後の最後にどれでもいいとなると、急にインデックス投資の信頼性が下がるような気がします。ここは、もう少し他の書きようがあったかもしれません。
なお、参考文献が1冊も挙げられていませんが、ぜひ何か入れておいてほしかったように思いました。
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- 小幡績(2013.5)『ハイブリッド・バブル』ダイヤモンド社
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- 川島博之(2012.11)『データで読み解く中国経済』東洋経済新報社
- 吉本佳生(2011.10)『日本経済の奇妙な常識』(講談社現代新書)講談社
- 野口悠紀雄(2013.1)『金融緩和で日本は破綻する』ダイヤモンド社
- 吉田繁治(2012.10)『マネーの正体』ビジネス社
- 午堂登紀雄(2012.4)『日本脱出』あさ出版
- ウォルター・ブロック(2011.2)『不道徳な経済学』講談社+α文庫
- 内藤忍(2011.4)『こんな時代を生き抜くためのウラ「お金学」講義』大和書房
- 瀬川正仁(2008.8)『老いて男はアジアをめざす』バジリコ
- 増田悦佐(2012.1)『日本と世界を直撃するマネー大動乱』マガジンハウス
- 藤沢数希(2011.10)『日本人がグローバル資本主義を生き抜くための経済学入門..
- きたみりゅうじ(2005.10)『フリーランスを代表して申告と節税について教わっ..
『ほぼ確実に世界の経済成長があなたの財産に変わる最も賢いETF海外投資法』
という長〜いタイトルの本の著者の北村慶です。
いつもながら、鋭いご指摘、ありがとうございました。
週末作家なので、執筆がつらくなることもあるのですが、
こうやってご指摘をいただくと、より良いものを書きたい、
という気持ちが沸いてきます。
取り急ぎ、御礼まで。
なお、ご指摘の点は、今後の参考にさせていただきます。
ありがとうございました。
コメント、ありがとうございました。
著者ご自身からコメントをいただけるとは光栄です。
今後の著作にも期待しておりますので、よろしくお願いいたします。