読み出してすぐのプロローグ(pp.7-11)に、ちょっとありえない(考えられない)ようなトラブルが出てきます。日本人駐在員が中国で巻き込まれたトラブルです。こんな話が続くのか、だったら読んでみようと思って読み始めたのですが、本書は全体にあまりおもしろくありませんでした。
目次は、以下の通りです。
プロローグ――「不思議の国」と付き合う法
第1章 温家宝首相の来日を追う
第2章 歴史に呪縛された日中関係
第3章 試練に立つ共産党支配
第4章 台頭する共青団の実力
第5章 中国軍の思想と行動
第6章 社会を破壊する格差
第7章 党中央宣伝部とメディアの自由
第8章 未完の「胡錦涛革命」
この中では、第6章と第7章がおもしろかったように思いました。
第6章は、中国の中の格差問題を取り上げて解説しています。最近制定された「物権法」も、実は農民などの評判は必ずしも良くないのだそうで、反対声明が出されるなどと聞くと、意外に思いました。p.183 では、物権法が豊かで力のある者の所有権を保護する一方、貧しく力のない者からの「合法的」な収奪をいっそう進行させることがあるとしています。
第7章は、メディアが自由に何でも書けない現状を解説しています。最近は、以前のような共産党によるガチガチの取り締まり体質と若干違ってきている面もあるようですが、基本的にはメディアの自由がない国です。
これ以外の章は、乙はあまり興味が持てませんでした。投資と直接関連しないということもあると思いますが、乙の中国に関する知識が不足しているためではないかと思いました。典型的には中国の人名です。国家主席クラスの人は、だいたいどんな人かわかりますが、それ以下の政治局員などに関しては、人名をいわれてもさっぱり実感がわきません。少なくとも顔が浮かんできません。しかし、本書では、そのようなレベルで、誰々がどうこうしたというようなことがたくさん出てきます。こうなると、どうもおもしろく感じないのです。
それはさておき、中国の現実は、なかなかきびしいもののようです。中国国内にかなりの不満が溜まっているように思えます。それが今後噴き出すのか、あるいはすでに噴き出している(報道されていないだけ)と見るべきか、いつ何が起きるかわからない不安感があります。
やはり、中国投資は慎重であるべきかもしれません。
【関連する記事】
- 香川健介(2017.3)『10万円からできる! お金の守り方教えます』二見書房
- 大江英樹、井戸美枝(2017.2)『定年男子 定年女子』日経BP社
- 天達泰章(2013.6)『日本財政が破綻するとき』日本経済新聞出版社
- 安間伸(2015.11)『ホントは教えたくない資産運用のカラクリ 投資と税金編 ..
- 橘玲(2014.9)『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方 2015』幻冬舎
- 橘玲(2014.5)『臆病者のための億万長者入門』(文春新書)文藝春秋
- ピーター・D・シフ、アンドリュー・J・シフ(2011.6)『なぜ政府は信頼できな..
- 小幡績(2013.5)『ハイブリッド・バブル』ダイヤモンド社
- 吉本佳生(2013.4)『日本の景気は賃金が決める』(講談社現代新書)講談社
- 川島博之(2012.11)『データで読み解く中国経済』東洋経済新報社
- 吉本佳生(2011.10)『日本経済の奇妙な常識』(講談社現代新書)講談社
- 野口悠紀雄(2013.1)『金融緩和で日本は破綻する』ダイヤモンド社
- 吉田繁治(2012.10)『マネーの正体』ビジネス社
- 午堂登紀雄(2012.4)『日本脱出』あさ出版
- ウォルター・ブロック(2011.2)『不道徳な経済学』講談社+α文庫
- 内藤忍(2011.4)『こんな時代を生き抜くためのウラ「お金学」講義』大和書房
- 瀬川正仁(2008.8)『老いて男はアジアをめざす』バジリコ
- 増田悦佐(2012.1)『日本と世界を直撃するマネー大動乱』マガジンハウス
- 藤沢数希(2011.10)『日本人がグローバル資本主義を生き抜くための経済学入門..
- きたみりゅうじ(2005.10)『フリーランスを代表して申告と節税について教わっ..