2009年03月18日

角山智(2009.1)『資産運用の強化書』パンローリング

 乙が読んだ本です。「銘柄選びよりも大切な投資の基本」という副題がついています。
 角山氏といえば、バリュー株の投資家だとばかり思っていました。
 『株価4倍「割安成長株」で儲ける収益バリュー投資術』
2006.8.4 http://otsu.seesaa.net/article/21894584.html
あるいは『超特価バリュー株「福袋銘柄」で儲ける週末投資術』
2006.8.2 http://otsu.seesaa.net/article/21794517.html
といった本を書いている方です。
 本書は、アセット・アロケーションに重点をおいた書き方になっており、以前の本とは立場が大きく異なっています。分散投資が中心です。
 これについて、まえがき中の p.6 で、次のように述べています。「私は、13年間投資を行ってきました。日本新興市場の小型株を好んで売買するという、よくあるタイプの個人投資家です。【中略】2006 年から、以前より興味を持っていたアセット・アロケーション重視の投資に切り替えたのです。債券や REIT を組み入れ、株式については ETF を活用した国際分散投資を行っています。」なるほど、角山氏は宗旨替えをしたのですね。
 本書に書いてある内容はまともなことですが、ある意味で退屈しがちかもしれません。分散投資の本というと、だいたい似たような内容になってしまうものです。
 乙は、第6章の「【株式】エマージング市場」が気になりました。はじめに、BRICs ブームがあったけれど、最近はめちゃくちゃになっていることが述べられています。それから、1990年代の「アジアの4匹の虎」(韓国、台湾、香港、シンガポール)でも同様で、ブームは怖いとしています。p.141 では、メキシコの IPC 指数の推移を載せ、メキシコ通貨危機の傷跡が残っているとしています。また、p.143 では、香港のハンセン指数の推移を載せ、アジア通貨危機のようすがわかるとしています。確かに大幅な下落が見てとれます。しかし、2枚のグラフを見ると、通貨危機があっても、その後は持ち直し、それ以前よりも株価は上昇しているのです。つまり、著者が説くように、「エマージング株式市場は危ない」のではなく、大きな価格変動があることもありますが、結果的には長期間保有を続ければ大きなプラスになったといえるのではないでしょうか。
 p.145 のタイの SET 指数では、大きな落ち込みのあと、株価が回復していませんし、p.147 のベトナム VN 指数でも、大きく落ち込んだままになっていますが、これらも、今後時間が経てば回復するのではないかと思われます。BRICs についても、同様に考えられるのではないかと思います。
 こんなことで、乙は、著者のいうほどエマージング市場が危ないとは思えませんでした。
 第12章「炭坑のカナリア」も気になりました。著者によれば、株価の変調は前もってわかるというのです。注意するべき指標があるというわけです。本書では六つの指標(長短金利差、イールドスプレッド、商品市況、銀行株指数、クレジットスプレッド、恐怖指数)を紹介しています。
 p.262 では、日本株でシミュレーションをしており、逆イールドが生じた場合、翌年は投資を行わないようにすると、何もせずにじっとしているよりは成績が大きく上昇するというわけです。これは本当でしょうか。こんなことで運用成績が上がるならば、プロのファンドマネージャーたちがそういう戦略を採らないのはなぜなんでしょうか。日本株ファンドでありながら、1年間も株をまったく保有せずにキャッシュポジションのままにしておくのは、本来、ありえないことかもしれません。しかし、それが正しい運用ならばそうすべきです。あるいは、一部のヘッジファンドのように空売りも行うような運用方針であれば、ここぞとばかり空売りで勝負するべきです。なぜ、プロがそうしないのでしょうか。乙はここがわからなかったです。
 六つの指数があるといったって、それらが相互に矛盾するとしたときどうしたらいいかという難問もありそうです。
 著者はタイミング投資はありではないかとしていますが、一般の個人投資家にとって、タイミング投資はきわめてむずかしいものと思います。
 本書は、海外分散投資の本ではありますが、全面的に信用していいかと考えてみると、少しだけ疑問を感じました。
 余談ですが、p.205 では、相関係数について「0.1%」と書いてあります。「%」が余分です。単なるミスプリであることを祈っています。





ラベル:角山智
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posted by 乙 at 05:29| Comment(2) | TrackBack(0) | 投資関連本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
>逆イールドが生じた場合、翌年は投資を行わないようにすると、何もせずにじっとしているよりは成績が大きく上昇するというわけです。これは本当でしょうか。

逆イールドになった時点で(あるいはその前に)大きく株価が下がっているはずです^^
2003年の長期債の暴騰(0.4%の超低金利)を見れば明らか!

現在はそこまで酷くはないので、円債はまだ上昇の余地があるかも・・(変動個人向け国債は0.5%だが)

この方は教材で利益を得ていると自分でも言ってたし^^;債券の知識は少ないですよ(私の質問にも答えられなかったし)
Posted by 預金王 at 2009年03月18日 09:57
 最後の方の段落、
ファンドをかばうわけではありませんが、
さわかみ以外のファンドでは、
約款の規定とは別に、
株式ファンドで、
キャッシュポジションを30%とかに増やすことは実務的に極めて難しいと聞いています。

さわかみも、今回の暴落では、むしろ安値買い
に出動してしまったので、元本割れしています。

空売りはなおさら困難です。ファンドの
金額レベルでは、買いですら、マーケット・インパクトが大きく、
空売りで儲けるのは実務的に難しいです。
量的に空売りがばればれになり、証券会社のディーラーなどに踏み上げられて、大損
ということになりかねません。
Posted by 青三 at 2009年03月20日 00:50
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