2007.8.23 http://otsu.seesaa.net/article/52391498.html
これは、新興国の債券で運用する投資信託です。
最近、第65期の運用報告書が出されました。
http://www.kokusai-am.co.jp/fund/pdf/unyou/143104.pdf
ちょっとそれを見てみましょう。
p.1 で、過去6ヵ月の基準価額とベンチマークの推移のグラフがあります。課税前分配金込み基準価額と「JP Morgan EMBI Global Diversified(円換算)」のグラフを見ると、ほぼ重なっています。この投資信託は、アクティブファンドで、信託報酬は 1.6485% と高めなのですが、実際の運用成績はインデックス並みということです。こんなことをしていて 1.6485% の報酬は高いと思います。
p.3 では、過去6ヶ月間の基準価額の主な変動要因について述べています。債券要因はマイナス 11.1%、為替要因はマイナス 15.0% といずれも大幅なマイナスでした。
p.5 では、「JP Morgan EMBI Global Diversified(米ドルベース)」の6ヶ月間の推移のグラフがあり、変化率が △11.9% とあります。ベンチマークの -11.9% と比べれば、この投資信託は -11.1% だから、ちょっとだけマシだといえます。(両方とも、債券の利息を含めて計算しているはずです。)
p.6 では、過去6ヵ月の米ドル対円レートの推移のグラフがあり、変化率が △17.4% とあります。ベンチマークの -17.4% と比べれば、この投資信託は -15.0% だから、これまたちょっとだけマシだといえます。これは、p.2 にあるように、債券組入比率が約93%くらいで、7% ほどの差があるためでしょう。
p.22 では、投資信託財産の構成が書いてありますが、マザーファンドが 98.7%、コール・ローン等、その他が 1.3% となっています。また、マザーファンドを見ると、p.35 ですが、公社債が 92.9%、コール・ローン等、その他が 7.1% となっています。というわけで、全部を米ドルで運用しているわけではないので、為替レートの影響も少しだけ限定的だということになります。
p.4 では、ファンドの期間騰落率がベンチマークよりも 0.5% よかったことを述べ、その差異の要因としていくつか指摘していますが、どんな国の債券に投資していたか(オーバーウエイト、アンダーウエイト)ということだとしています。このあたりがアクティブ・ファンドのアクティブ・ファンドらしいところです。
p.4 を見ると、円ベースのリターンで、エクアドル -73.7%、ウクライナ -55.7%、アルゼンチン -53.7%、ベリーズ -51.2% などと、半額以下になってしまった国が4つもありますし、-40% から -50% の成績のところも6ヵ国ありますから、今期はひどい成績になったといえると思います。そういう国を避けることができていれば、運用成績はプラスになる(正確にはマイナスにはならない)といえるでしょう。
pp.7-8 では、マザーファンドのほうですが、国別資産配分が示されています。いろいろ考えてオーバーウエイト・アンダーウエイトしていることがわかります。
しかし、そんなふうにがんばった結果としてベンチマーク比で 0.5% のプラスだとしても、信託報酬 1.6485% を考えたら、とうてい信託報酬ほどの成績は上げていないと見ることができます。大きく見れば、このファンドはインデックス並みの成績しか上げていません。債券のアクティブ・ファンドと言っても、インデックスに対して、若干国別配分を変える程度なんですね。なかなかアクティブな行動は取りにくいということがわかります。
p.10 では、過去6ヶ月間の1万口当たりの損益と繰越分配可能額の推移を示しています。これによると、配当等収益(経費控除後=信託報酬を引いたあと)は、毎月 34-44 円程度になっています。一方、分配金は 60-80 円になっており、何としても分配金を出そうとしている方針であることがわかります。次期繰越分配可能額がだんだん減っていますが、今までの蓄積があるので、分配金を出し続けることも可能だというわけです。ま、このあたりはファンドの方針ということですが、乙のように、最近になってこのファンドを購入した人間から見ると、(過去の値上がりを享受しているわけではないので)分配金を出さないようにしてほしいと思います。自分の資産を取り崩しているだけですから。
p.15 には、1万口当たりの費用の明細が書いてあります。信託報酬 63 円以外には、保管費用等 0 円、監査費用 0 円と安いものです。0 円といっても、タダというわけではなく、0.5 円未満の費用しかかからなかったということでしょう。マザーファンドのほうでも、p.34 にあるように、費用は、保管費用等が1円ということだけですから、債券の投資信託は、あまりコストがかからないものなのでしょう。p.34 でマザーファンドが行っている売買状況が示されますが、資産総額に比べれば大した金額ではありません。株式の投資信託ほどには頻繁な売買をするわけではないということがわかります。(結果的にコストがかからないということにもなります。)債券の投資信託としては当然のことかと思います。
こんなことで、この投資信託は、信託報酬が高いので、あまりいいものではありません。乙としては、乗り換えたくなってきました。
2009.8.17 追記
この話の続きを
http://otsu.seesaa.net/article/125927791.html
に書きました。
よろしければご参照ください。
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くまが保有していた、年金積立インデックスファンド海外新興国(エマージング)債券の運用報告書の感想をまとめてあります。
http://www.bear-dream.com/blog/2009/01/post_31.html
こちらは、1万口(元本10,000円)当たりの費用の明細がとんでもなく高額でした。
信託報酬の他に、過去の1万口(元本10,000円)当たりの費用の明細の平均も明示すべきではないかと思うところです。