本書は、城繁幸(2006.9)『若者はなぜ3年で辞めるのか?』
2006.10.14 http://otsu.seesaa.net/article/25446099.html
に続く本です。
内容は、大きく3章に分かれていますが、細かくは22の節(と三つのコラム)に分かれています。
それぞれの節は、たとえば、昭和的価値観1「若者は、ただ上に従うこと」のように、昭和的価値観を表す言い方が題名としてつけられています。そして、書かれた内容は、いろいろな人にインタビューした結果です。昭和的価値観に反発する若者を描いています。
確かに、3年で会社を辞めた若者がその後どうなったかを描くには、これで十分なのかもしれません。しかし、不十分なのかもしれません。インタビューができる人というのは、一般に自分をさらけだしてもいいと考える人で、それは、成功者の場合にはそういう人の比率が高いでしょうが、成功者でなかった場合は、なかなかインタビューに応じようとしない人もいるでしょう。
そのようなバイアス(偏り)を考慮すると、若者のうち、比較的うまく転職した人(転職して給料が下がっても、それでいいと考え、別の面で満足感を持っている人)を描き出しているのではないでしょうか。
乙としては、統計資料などを駆使して、もう少し全体を概観するような量的側面も描けていたらよかったのにという印象を持ちました。
これは乙が疑り深い性格を持っているためかもしれませんので、そのような偏りを考慮して、受け止めてください。
本書は全体として、平成的価値観とも言うべき「多様性」を前面に出し、昭和的価値観で若者を縛り付けてもダメなんだというメッセージを強く打ち出しています。
乙は、中高年者に属しますから、描かれている若者たちを見ていると、かなりたるんだように見えるという面もあります。一方で、こういう若者が増えているのは事実ですから、それに対応した見方をしなければならなくなったんだという、ある種感慨深いものもありました。
乙がおもしろいと思ったのは、p.170- のコラム「21世紀の大学システム」です。社会の多様化にともない、大学もまた多様化しなければならないというわけで、今後の大学教育を考える上で参考になります。自分は大学を卒業してしまったという場合でも、子供が、孫が、さらにその先の子々孫々が大学に進学することを考えれば、誰でも無関心ではいられないはずです。
pp.178-179 では、就職しようとする若者から日本企業が見捨てられており、外資系企業が注目の的になっているというのです。いやはや、変わろうとしない日本企業を見捨てようという発想はすばらしいです。ぜひそういう心意気で、若者には自分なりの人生を歩んでいってほしいと思いました。みんなが自分の立ち位置で努力することで、結果的にお互いがお互いにいい影響を与え、社会全体としてプラスになっていくはずですから。(単純な楽観論に過ぎませんが。)
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