就活(=就職活動)について、学生、大学、企業、インターンシップ、就職情報会社の五つの観点から総合的に眺めたものです。
乙は、就活とはあまり縁がなく、自分の活動はずっとずっと昔のことでしたし、息子たちの就活も終わってしまったし、ということですが、最近は、学生たちが就活に一生懸命なのを見聞きするので、気になって読んでみました。
一読して、日本の就活はゆがんでいるなあという感想を持ちました。まさに題名通りに「就活のバカヤロー」といいたくなる気分です。「はじめに」に出てくる「焼肉の生焼け理論」は、「その通り!」という感じです。焼肉は、十分焼いた方がおいしいのはわかっているけれど、さっさと食べないと他の人に食べられてしまう、したがって、みんなが急いで生焼けの焼き肉を食べるようになるという理論です。就活もまったく同じです。乙の就職活動は、卒業の半年前になってから始めたくらいですから、今とはまったく違っていました。(まあ、当時でも遅い方だったですけれど。)今や、3年生の夏休みのインターンシップ(その申込は5月〜6月)あたりから実質的に就活が始まるようですから、学生生活の半分は就活に取られてしまうようになっています。
第1章「就活生はイタすぎる」では、就活をする学生の実態を描いています。変な学生もいるのですね。でも、就活する学生はみんな初体験なのですから、どう対処したらいいのか、わからないのが当然なのです。
第2章「大学にとって「就活はいい迷惑」」では、大学側を記述します。就活で授業が妨害されると叫ぶ教授。しかし、一方では、入学者向けパンフレットなどで優れた就職実績を誇る矛盾。いやはや、こちらも大変な実態があります。
第3章「企業の「彩活」真相はこうだ」では、企業側から見ます。乙は、企業の中の人事部などの考え方をまったく知らなかったので、ここが一番興味深かったです。
第4章「インターンなんてやりたくない」では、インターンシップが、本来の就業体験というあり方からそれて就活の一部になり、しかも、それへの参加は就活の成果にはまったく結びつかないという変な実態を描きます。
第5章「マッチポンプで儲ける就職情報会社」では、リクナビやマイナビなどのナビサイトの裏側を描いています。これまた、乙が知らないことがたくさん書いてありました。
本書は、「取材」を通して得られたことをまとめて書いています。そういう書き方だからかもしれませんが、これからどうするのかというような視点はほとんどありません。現状の記述が大部分です。取材元の人は、すでに知っていたわけですから、つまりは、すでに知られていることをまとめ直した本ということになります。
それにしても、こんな就活をやっている日本という国は、いったいどうしたんでしょう。「バカヤロー」と叫んでも何も解決しません。
乙は、こういう「茶番」を演じている日本企業の、また日本そのものの将来に不安を覚えました。
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