一読した結果からいうと、乙にはむずかしすぎて手に負えませんでした。
むずかしい用語は太字で表され、巻末に用語解説があります。それでだいぶわかるのですが、解説がいらない程度の用語でも、乙は必ずしもよくわかっているわけではないようなものがポンポン出てきます。
ちなみに、エイヤッと開いた p.149 で、乙がよくわからなかった用語(特に説明されているわけではないもの)をあげてみると、次のようなものです:オリジネーター、劣後部分、オフバランス化、自己資本比率規制、資産規模圧縮。これはエイヤッの一ページを取り上げたのですが、どこのページでもこんな調子で、これらをすでに知っている(説明なしで十分わかる)ような読者が読むべき本だということになります。
「集中講義」と銘打っていますが、学生などに向けた集中講義ではなさそうです。プロローグによれば、二人が互いに教え合うような形で集中講義を行ったようで、ある種の対談集のような感じにできあがっています。しかし、その話される内容は、二人とも経済学の専門家ですから、相当に高度なものになります。
統計や図表類を示して現状を解説するというよりは、経済学の考え方を語るといった感じで、抽象的な議論が多いように思いました。世界標準の経済学を語るという趣旨はいいのですが、それを理解するのが大変です。
p.49 では、次のような発言があります。「池尾:金融危機への政治的対応というのは、民主主義的な体制とは矛盾しかねないような難しさがあります。例えば、公的資金の投入を国民に認めてもらうためには、いかに金融危機が深刻な状態にあるかを説明しなければなりませんが、公的資金の投入を含む危機解決の準備が整っていない段階で、一国の政治的責任者が、金融危機が深刻であると明言してしまうと、それこそパニックの引き金を引くことになりかねません。
責任ある政治家が金融は危機的状態にあると言ってよいのは、それに対処する万全の準備が整った後でしかない。逆にいうと、そうした対処の準備を金融が危機的状況にあると言い切ることなく進めなければならない。これは、ジレンマにほかなりません。」
なるほど、だから政府関係者などは大々的に発表したりしないのでしょう。今回の金融危機が突然起こったかのように見えるのはこういうことだったのですね。乙は、もっと先にしかるべき人から「警告」が発されてもよかったはずなのになどと考えていましたが、それは間違っていたということです。
p.283 (エピローグ)で、19ヵ国のデータで、起業活動従事者のシェアと実質GDP成長率の相関関係を示すグラフが出てきます。日本は左下の隅にあります。つまり、日本は起業活動従事者が少なく、実質GDP成長率が低いというわけです。日本の特徴をよく示しています。相関関係は因果関係ではありませんが、通常の解釈では、前者が原因で後者が結果でしょう。
こんなことで、乙が部分的に理解でき、またおもしろいと思う部分もあったのですが、全体は難解な本だったという感想です。自分のレベルの低さ(「お前はまだ勉強が足りないよ」)を指摘されたような感じでした。
もっと経済学を勉強してからこの本を読めばよかったのでしょう。
こんなことしか書けずに、まことにスミマセン。
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