とてもおもしろい本でした。この本を読むと、99%のマネー運用本が無効になってしまうというのですが、確かにそうかもしれません。
山崎流の投資術が書いてあります。しかも、結論から書いてあって、引き込まれます。
結論は三つです。ここに書いてしまっても、この本の売り上げが落ちることはなさそうですから、書きましょう。
@当座の生活に必要なお金を銀行の普通預金に置く。
A残ったお金は、全額 ETF に、国内株4割、外国株6割の比率で投資する。
B大きな支出の必要が生じたらAを躊躇なく部分解約してこれに充てる。
これで全部です。簡単です。しかも、この本によれば、Aの ETF は、国内株が 1306、外国株が TOK と銘柄まで書いてあります。
本書では、この基本型に加えて発展形としてリスク調整型というのも出てきますが、基本型をもう少し複雑にしたものにすぎません。
第1章は約40ページですが、この投資法をきちんと述べます。
第2章は50ページほどをかけて、なぜこの投資法でいいのか、その根拠を解説します。
ここまでが本書のメインです。
確かに、これから投資を始めようとする人にとっては、このやり方でいいと思います。p.210 のあとがきでは「他の入門書がいらなくなるような、お金の運用の本を作りたい」というねらいを語っていますが、このねらいは成功していると思いました。もっとも、一番の問題は、投資を始めようとする人が本書を最初に手に取るかどうかということと、もしも手に取ったとして、山崎氏の主張に納得するかどうかということにあります。書店にはさまざまな本があふれているわけですし、それが間違っているということは、初心者にとって、なかなかわからないわけですから。
第3章は「お金のあれこれ簡単レクチャー」と称して、10個のレッスンを述べています。
その中では、レッスン9「パニック論をどう考えるか(たとえば財政破綻)」がおもしろかったです。山崎氏は、政府全体の資産が大きくて、純債務で考えれば大した赤字ではないということと、国内で国債が消化されているから問題にはならないということから、パニック論を排しています。
しかし、一方では、p.196 に書いているように「日本政府の債務の最適残高はどれくらいか」という問いに誰も満足できる答えを持ち合わせていないという現状があるわけで、気が付いたら国家破綻になっていたという可能性も捨てきれません。しかし、山崎流投資術では、外国株に6割を投資していますから、国家破綻があっても大丈夫だといえるように思います。
何はともあれ、最近読んだ本の中では一番おすすめできる本だと思いました。乙も最初にこの本に出会っていれば投資のしかたが相当に変わっていたことでしょう。
本書を一読して、乙は自分の投資戦略を根本から改めるほうがよさそうに思えてきました。
これから投資を始める人にとっては、本書の説く方法でいいと思います。すでに投資をしている場合も、順次、この方向に舵を切ればいいということです。しかし、それにはかなりの手間がかかります。そうでなくとも忙しい生活を送っている状態で、そんな「調整」を行うのは大変な気がします。しかし、やらなければなりません。
今年は、乙にとって大変動がありそうに思います。
ラベル:山崎元
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