住友信託銀行が、過去に発行した社債を割安価格で買い戻したそうです。発行価格の 75% で買い戻したので、合計 90 億円の利益を上げたとのことです。
ネット内では、5月27日付で公表されていました。
http://ir.nikkei.co.jp/irftp/data/tdnr1/tdnetg3/20090527/5ogeaq/140120090527006690.pdf
こういう記事を読んで、乙がよくわからなかったのは、社債を持っていた投資家たちは、なぜ 75% の価格で手放すのかということです。
日経新聞の記事では「現金を確保できる」からだとしていました。でも、それって変です。確かに、債券なんですから、売れば現金にできます。しかし、あえて損失を確定させるような「売り」をする以上、投資家が将来的にこの社債が償還されない可能性がある(しかも確率が 25% 以上とかなり高い)と予想していることになります。「永久劣後債」ということで、償還期限がなく返済順位が低い債券なのだそうですが、それにしても、それを売ることに同意した機関投資家の判断はどうなのでしょうか。住信が子会社を通じて買い戻したとのことですから、「ほら、財務内容がこんなにも悪く、長くは持たないですよ」などと悪材料をどんどん出せば、機関投資家もそれっとばかり売りに合意するのでしょうか。自分に都合の悪い情報は、隠すよりはきちんと対外的に説明するほうが透明性があっていいに決まっていますが、それにしても、悪材料を説明すればするほど、社債の買い取り価格が下がることになりそうです。こうなると、インサイダー情報ではないものの、いくらでも操作できそうな話です。
決算をよく見せかけるのは粉飾決算ですが、悪く見せかけることも同じでしょう。
この子会社は、全然口添えなしで、75% に値切ったのでしょうか。どうやって 75% に決めたのでしょうか。
こういうことがあると、債券(社債)市場は怖いなあということになってしまいそうです。
それにしても、こういう操作で 90 億円の儲けですか。住信にとっては大変いい実入りでしたね。
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「あぶない、あぶない」ですね。
そうなのです。
社債を購入するときは、倒産しない限り元本保証と考えますよね。
それがそうでなかったということが驚きでした。
確かにポンド建て債券ですが、海外の(機関)投資家にとっては、為替レートは特に関係しないはずです。
もし為替レートを考慮するとすれば、平成18年ころはポンドが高かったころで、今は安くなっていますから、話はむしろ逆で、投資家は大損していることになります。