タイトルに引かれて読んでみる気になりました。
日経平均が 3,000 円になるというと、大事件のような気がしますが、では、具体的にどんな方法で資産が守れるのでほうか。
本書の結論からいうと、子どもへの教育投資を重視しているようです。それに加えて、p.194 で外貨 MMF をあげています。また、p.195 では、マンの ADPを、p.196 では金(ゴールド)への投資を説いています。前田氏はこういうものを組み合わせることで「日経平均 3,000 円」を乗り越えようとしています。
しかし、前田氏は p.68 で円高になること(1ドル=50円)も予想しているので、もしもそうならば、外貨 MMF にしておいても資産が目減りするだけではないでしょうか。
p.127 以降では、デノミの説明が出てきます。円が暴落して、1ドルが1万円になるような場合、1ドル=1新円にすることを書いています。すると「1億円の価値は実は1万分の1に減ってしまうのです。」というのですが、デノミは単なる通貨の呼称の変更にすぎませんから、1億円の価値が(いや、いくらであっても)1万分の1になると同時に、我々の(国家も同じですが)収入も支出も1万分の1になりますから、元々の1億円の価値が変わるわけではありません。国債の価値がほぼゼロになる話も出てきますが、これはデノミとは別の話で、デノミをしたから国債の価値がなくなるわけではありません。
p.136 では、日本の少子高齢化を解決するためには移民の増加しかないとしています。安易な低賃金労働者を導入するのでなく、日本語ができるとか、日本国債を1億円以上買ってくれる人とか、条件をいろいろ付ければいいというわけです。そうかもしれません。しかし、そういう一部富裕層が日本に移住してくるでしょうか。相続税を初めとする税金が高く、物価も高く、投資機会があまりない(今後の日本経済の先行きに安心できる人は少ないでしょう)日本にどういう魅力があるのか、乙にはわかりません。
p.140 から大量失業時代に突入する日本を描いています。企業も個人も日本脱出なのだそうです。そうかもしれません。しかし、その先には滅び行く「日本」があるだけです。海外に脱出した日本人たちは、根無し草的になってしまうだけのような気もします。日本語が通じることが日本の最大の魅力であり、母語として日本語を身につけた人にとっては日本が一番安心できる場所であると思います。やはり、日本を脱出できるのは、富裕層だけになりそうです。
p.181 では、金本位制に戻るという大胆な予想が書いてあります。これは大問題で、金本位制から抜け出してしまったら、もう元に戻れないように思いますが、どうなのでしょうか。
一読して、前田氏のお話はおもしろいところがあるものの、それを裏付けるデータや資料が不足しており、説得力がなく、自分勝手な主張の域を出ないように思いました。
乙は今までも前田氏の本を何冊か読んできました。
2007.8.15 前田和彦(2007.8)『5年後にお金持ちになる海外投資』フォレスト出版
http://otsu.seesaa.net/article/51438133.html
2006.9.20 前田和彦(2006.8)『5年後にお金持ちになる資産運用』フォレスト出版
http://otsu.seesaa.net/article/24035583.html
2006.6.6 前田和彦(2004.8)『借金国家から資産を守る方法』フォレスト出版
http://otsu.seesaa.net/article/18894635.html
本書も類似した本のように思います。世界経済の危機を煽って、プライベート・バンク(あるいは前田氏個人)に目を向けさせようとしているだけかもしれません。
普通の人が資産運用する場合は、この本に頼ることは危ないように思いました。
ラベル:前田和彦
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- 吉田繁治(2012.10)『マネーの正体』ビジネス社
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そういう類の本を読みますといやな気分になりますね。最後のページに筆者の写真が載っている場合もありますが、ヒタイのところに『お金』のマークがついているのではないかと目をこらしたこともあります。『肉』マークだったらまだよいのですが。。
まあ、破綻本に近いといっていいと思います。
日本の暗い未来を予測しています。
そうなるかもしれないけれど、そうならないかもしれないわけで、なんともわかりません。そのあたりは自分がどう考えるかでしょうね。
少なくとも、「神様」扱いしては(単純に信じては)いけないと思います。