2009年07月13日

正規、非正規社員の壁を崩す電機連合

 日経新聞7月12日の社説に「正規、非正規社員の壁を崩す電機連合」という記事がありました。
 その中で、電機連合
http://www.jeiu.or.jp/
が定期大会で決定した新しい賃金政策について好意的に紹介しています。
 簡単にいうと、非正規社員の賃金制度を正社員に近づけ、両者の壁を崩そうという案です。
 乙は、これを読んで、おやおやと思いました。これが本当なら、電機業界の未来は暗いものになりそうです。
 確かに、現状は正規 vs. 非正規の格差は大きいと思いますし、それが社会的に問題だというのはわかりますが、その解決の方向は、正社員の賃金制度を非正規社員に近づける(あるいは両者の中間的なものとする)しかないものと思っていました。
 そもそも、日本は少子化が強まり、働く人間が減りつつあります。消費する人間も減ります。会社が大きくなることは必ずしも期待できません。そのような縮小再生産が見込まれる日本で、働く人々の賃金だけが上がっていくなんてことはあり得ません。昔(高度成長期)は、人口ピラミッドを見てもわかるように、老人が少なく、若い人が多く、今と反対に、会社の中の職階のピラミッド構造がそのまま機能したように思います。日本社会がどんどん豊かになったし、個人レベルでもそれが期待できたし、会社が大きくなっていく途上で管理職もどんどん必要になったわけです。キャリアアップも賃上げも、そのような状況の変化にともない、比較的楽に実行できたでしょう。
 もう一つは、諸外国との関係です。昔は、為替レートは1ドル 360 円に固定されていました。(180 円で握れるものはなあんだ? 答えは「ハンドル」なんてクイズもありましたっけ。)ですから、外国との関係を考える必要は(少なくとも表面的には)なかったと思います。しかも比較的円安水準でしたから、輸出しやすい環境だったわけです。しかし、今や為替は変動相場制になり、基本的な流れとして円高が続いていますから、新興国との競争も考える必要があります。これを言い換えると、新興国でもできるような仕事は、新興国並みの賃金しかもらえないということです。電機連合の人たちの仕事はどうなんでしょうか。非正規社員のできる仕事は、たぶん、新興国の労働者でもできるのではないでしょうか。だから、そういう人の賃金は下げざるを得ません。それが現状です。
 もしも、今の日本の諸制度をそのままに、非正規社員の賃金を正社員並みにすると何が起こるか。企業は、人件費の上昇に悩むことになります。その結果、当然の選択として、日本人非正規社員を雇うよりは新興国の労働者を安く雇うほうがいいということになります。外国人の非熟練労働者を日本に連れてくることは困難ですから、企業が日本を見捨てて海外に流出するということになります。日本ではその分の失業が起こります。もう、現状でそうなっていると考えてもいいのではないでしょうか。
 企業の「海外進出」というとかっこいいですが、「海外流出」と見てもいいと思います。こうして日本全体が没落するのです。
 一部の人が主張する、国内の最低賃金を上げようなどという動きも同じ結果を誘発します。
 企業の正社員が新興国の賃金よりも高い賃金をもらうことが可能なのは、それだけの生産性を上げること、あるいは、諸外国との競争が(少)ない(つまり非関税障壁などで守られている)ことなどの条件下においてです。接客業の人たちは、日本人との日本語によるコミュニケーション能力が必須ですから、高い賃金がもらえるけれど、製造業の人たちは、普通に考えれば、高い賃金がもらえるはずがありません。
 もちろん、今の日本は正社員のクビを簡単に切れないのですが、だからこそ、非正規社員が増大したといえるのではないでしょうか。
 正規、非正規の問題は、日本社会のあり方にも影響する大問題です。
 乙は、少なくとも、電機連合のようなやり方で長期的かつ安定的にこの問題が解決できるとは思えません。


posted by 乙 at 03:39| Comment(7) | TrackBack(0) | 投資関連の話題 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
その通りだと思います。
新興国の労働者に比べて日本の労働者が当然のように高い給料をもらえるという発想がおかしいのです。より高い給料をもらう理由には、価値のあるスキルを保有している、勤勉である、資格に守られている、インフラが整備されている、法制度が整備されている(知的財産権などが守られる)があげられます。しかし、グローバル化が進んだ現代に、日本の労働者に新興国の数倍の給料を払う値打ちがないと企業が考えるのではないでしょうか?

最近の日本では格差を問題視し、弱者を保護しようとする風潮が盛んです。しかし、弱者の中には国際社会の生存競争に敗れた人々も多く含まれ、日本の格差が開いたというより、これらの人々が世界レベルで新興国の人と格差を是正されつつあるということなのではないでしょうか?
日本が無理な法制度や、過剰な所得再分配で格差を解消しようというのは、日本全体の凋落につながっていくと思います。
Posted by くま at 2009年07月13日 18:00
電機会社に勤める者です。日本の電機会社はいろんな面ですでに凋落しています。
国際的に競争力のある世界の会社はすでにWWの観点から最適化を実施しています。今頃日本レベルで皆さん平等に、、なんていっている時ではありません。社員を救う前に会社自身が崩壊します。日本の電機メーカーの利益率の低い状態のまま、電機労連は相変わらず「農耕民族」的発想で今はみんなが我慢しあう。。ではとても生き残れません。
Posted by kazu at 2009年07月13日 21:42
kazu様
 何と、電機会社の関係者からコメントをいただくことになろうとは、乙もびっくりです。
 日本の電機会社はすでに凋落しているといっていいのですか。
 ま、企業の利益率を見ればいろいろなことがわかるというものでしょう。
 さて、ではどうするか。今の経営者にうまく舵取りできる人がいるでしょうか。
 なかなかむずかしそうですね。
 単に頭がいいだけではなく、社会を見渡して、日本社会はどうあるべきかまで考えて、自分の会社を経営していくような「ビジョン」が必要なのでしょう。
 どうしたらいいか、乙に名案があるわけではないし、もちろん、乙自身がどこかの会社の経営者になるはずもありません。
Posted by at 2009年07月13日 22:26
では逆に乙川さん自身の賃金制度を非正規社員に近づける、
あるいは正規社員と非正規社員の中間的なものとすると言われた場合、
受け入れる事は出来ますか?

この手の問題の難しい所は、総論賛成、各論反対になるところです
(他人の賃金は平等(削減)を追求、自分の賃金は現状維持を追及)。
また多分賃下げは従業員の士気を低下させ、会社の業績悪化につながる気がします。

もちろん非正規社員の賃金制度を正社員に近づける事も難しいでしょうが。

何となく解決法は起業しやすい社会になり、雇用が創出されやすくなることのような気がしますが、日本では難しいかもしれませんね。
Posted by at 2009年07月14日 00:17
<では逆に乙川さん自身の賃金制度を非正規社員に近づける、
<あるいは正規社員と非正規社員の中間的なものとすると言われた場合、
<受け入れる事は出来ますか?

 業界によっても答え方は違うでしょう。
 乙の勤務先にも、正規、非正規の格差が存在しますが、格差は温存されると思います。
 したがって、上記のような質問に対しては「NO」と回答することになります。
 では、もしも経営者がそのような判断をしたらどうなるか。労働組合をはじめ、きわめて大きな「反対」の声が上がるでしょう。労働条件の不利益変更だなどという主張がきっと起こります。退職者が続出する可能性もあります。他へ転職していくのです。乙の勤務する業界は、その意味で働く側の流動性がかなり高い業界なのです。
 ですから、総論を総論のまま通すためには、一企業、一業界の変更ではうまくいかないと思います。むしろ、日本社会全体で変わっていかなければならないということになります。
 だからこそ、解決がむずかしい問題なのだと思います。
Posted by at 2009年07月14日 05:16
業界によって答え方が違うとは思えません。
業界云々関係なく、ほぼ大半の人が「NO」と答えると思います。
電機連合もまた大半の人と同様であるというだけです。
どの業界であろうと大きい反対の声が上がるのは間違いないです。
逆に賛成という人がいれば是非会ってみたいものです。
多分賛成する人は、賛成することにより利益が発生する人だけでしょう。
Posted by at 2009年07月14日 20:12
 ここは、単に総論賛成、各論反対ということではありません。
 今は、制度上、働く人(の中でも特に正社員)の権利が守られすぎているので、「あなたはどうですか」と聞かれれば「NO」と回答するしかないのです。
 しかし、そのようなこと自体が日本の長期的凋落傾向(若い人に厳しい社会)をもたらしているという見方もできると思います。
 ですから、さまざまな法律を変えることを通じて、日本全体のあり方を大きく変えるようなことが実現すれば、正社員の中高年層の給与を下げることを通じて、若年層への支援が実現する可能性があります。
 今の段階で「乙自身の賃金制度を非正規社員に近づける」ことには、個人的判断ですから「NO」ですが、ある業界の全体が合意して(あるいは日本全体が合意して)そのような提案がなされるならば、乙は「YES」と答えるだろうと思います。
 しかし、今の政治家たちを見ても、今後の日本をどうするかといったビジョンのある人は見あたらないように思います。(乙が知らないだけかもしれませんが。)リーダーたるべき人がそれでは、日本全体が変わるということは不可能です。

 最後に、ハンドルネームでもいいので、「お名前」を書き込んでいただくほうが望ましいと考えます。名前がないと、それぞれの投稿が同じ人によるものか、別の人によるのかが判断できません。
Posted by at 2009年07月15日 04:34
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