著者の山本氏は、長年イギリスを中心に働いてきた人で、世界を飛び回ってきたとのことです。本書は、グローバル企業での働き方・ものの考え方が日本式のやり方と大きく違うということを述べた本です。ユニークな本だと思います。
著者の意図はわかるのですが、一読した感想では、著者の試みは失敗していると思います。
この本に出てくる話は、みんな抽象的なのです。第6章「国際ビジネスの舞台裏」は具体的な名前や事件が出てきますので、なるほどと思いながら読み進めることができますが、(とはいえ、p.219 の注にあるように、「本章の社名やサービスの名称および数値は、架空のものである。」とのことです)それ以外は、具体性がなく、著者のいいたいことはわかるのですが、記述に迫力がありません。
まあ、具体的に書くとあちこちに差し障りがあることは理解できるのですが、そこが著者の腕の見せ所ではないでしょうか。架空の名前で書くとか、ちょっと別の分野の話に仕立て上げるとか、さまざまな方法があると思います。そこからさまざまな経験を読み解くのが読者であるべきです。今は、著者がこれこれこういう違いがあると述べているわけですが、そのような抽象的なお話だけでは、単なる異文化論程度にすぎないのです。せっかくの著者の経験が活かされているとはいえません。
グローバル企業では個人の間でも契約の概念が浸透しているそうですが、そういう契約の中に、著者が企業内で勤務している間に知った事実について退社後は一切口外できないというような条項が入っているのでしょうかね。
でも、そこをうまくかいくぐって、著者の直接経験を活かした話を書かないと、おもしろくありません。
p.196 では、奥さんの山本麻子さんの本を紹介しつつ、イギリスやアメリカのビジネス・エリートたちは、幼いときから英語の勉強には大変な力を入れており、イギリスやアメリカでは英語ができる子が「頭が良い」とされることが書かれています。意外な一面でした。ここは日本の国語教育(という名の文学もどき教育?)を批判しているようにも受け取れます。
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