乙は、タイトルに引かれて読んでみたのですが、「若者は〜」ではなく「私は〜」という内容でした。つまり、本書はひとりの就職活動記です。自分で経験したことを書いているという意味でドキュメンタリーです。
さて、著者は26歳。大学院修士課程を出てから2年間、無職でした。こういう人が就職できるでしょうか。最後まで読むと、結局就職には失敗したようです。そこまでの顛末を語った本というわけです。
p.43 あたりでは、とにかくいろいろな会社に応募しても、片っ端から落ちるという経験を書いています。p.147 からはハローワークにいって職探しをしています。普通の求人とは違うということが書かれています。
しかし、最終的には就職できなかったのです。
なぜか。
乙には本質的な理由はわかりませんが、現実はこんなものかもしれません。
26歳ともなると、いわゆる新卒ではないし、かといって就職していたわけではないから何らかの技術を持っているわけでもないということです。毎年のように新しい人たちが大学を卒業して就職していきます。そのような大きな流れの中で26歳の無職青年を雇おうとする会社がどれくらいあるでしょうか。もちろん、何かの「売り」がある場合は別です。しかし、著者にはそういうものがなさそうです。
面接のようすなど、かなり具体的に書かれている部分もありますが、そういうのを読んでみると、ちょっとこの人は雇いにくいなと感じてしまいました。
乙は、勤務先でたまに人事に携わることもありますが、そういうわずかな経験から見ても、この人は積極的に雇いたくなる面が少ないように思えます。
p.63 には、年齢階級別フリーター数の推移(総務省統計局による)が書いてありますが、200万人もいるとのことです。15-34歳の統計ですから、1歳あたり10万人です。日本の人口統計
http://ja.wikipedia.org/wiki/日本の人口統計
を見ると、1歳あたり 150 万人くらいいますから、10万人はその7%にあたります。学校で30人のクラスがあれば2人です。30人のうちで、就職しようと思ってもできない人がいるかと思いをめぐらすと、2人くらいはいそうに思います。10万人という数字は、妥当な数字かもしれません。
個人的な顛末記ですから、あまり読む価値はないように思います。
前著『ネットカフェ難民』
2009.7.29 http://otsu.seesaa.net/article/124492008.html
を読んだ編集者が持ちかけた安易な企画という感じがしました。
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確かに、26歳未経験者、、結構企業からすると難しいかもしれませんね。
で、そうしている間に派遣で未経験からでもOKという社会が出来て、正社員と派遣社員の格差社会が出来るのでしょうか・・。
はい、未経験で安く使える人材をいかにうまく活用するか(できるか)が企業の業績を左右する面があると思います。
優秀な社員は、(将来の管理職として)別の仕事をさせ、そうでない人をうまく活用して、その人の能力を(その立場で)十分に発揮させればいいと思います。
もしも、その人が上昇志向をもってくれて、一生懸命働くようであれば、企業としては充分ではないでしょうか。
昔だったら、そういう人は模範工として、表彰されたりしたのですが、今は、せいぜい派遣社員の中で時給20円アップというレベルではないでしょうか。
企業からの視点と、労働者からの視点は、大きくずれているように思います。
乙は、企業の労務管理などに詳しくないので、あまり自分の意見がいえる立場にありません。
大規模な案件を受注して、「矢向はコントロールできる人間になれ、コントロールさえすればよい」なんてことを急に言われます。
派遣さんや、人件費の安い下請け会社を使って行けという支持があります。
正直ベースで、わからない業界に入ってくる新人に、大学卒業と収支卒業で、給料を多く支払う必要があるのであれば、大学卒業を育てたほうが良いかなと思ってしまいます。
支持→指示
収支卒業→修士修了
と理解しました。
現状では、会社全体の最適化を図るとすれば、正社員はすべて管理職になるということだろうと思います。派遣社員でもアルバイトでもパートでも、とにかく人件費の安い人を上手に使って、充分に働かせるようなことで会社の利益が最大になるのであって、何もかも正社員が全部行う必要はないし、むしろ、そんなことをしたらかえって人件費増になると思います。
たとえば、資料のコピーなどは、誰でもできますが、だからこそ、人件費の安い人が行うべきことだと思います。正社員が自分の時間を使ってコピー作業などをしていれば、それは余計なコストをかけているだけになります。
昔だったら、そういう仕事は若い女性の正社員に任せたりしたものでしたが、それがだんだん一般職の仕事になり、今では、パートやアルバイトの仕事になったということでしょう。
そういう社員の働き方を新人時代から定年退職までを単位にして考えると、修士修了者が大学卒業者と比べてどれだけメリットがあるかという問題が起こります。専門知識はそれなりに身に付いていいるでしょうが、その専門知識が会社に有用なものかどうかということです。有用なものであれば、大学卒業者以上の給料を払う価値があると思いますが、そうでなければ、むしろ勤務年数が2年ほど短いだけに、修士修了者のほうが不利だということになります。
著者の川崎氏は、美術史か何かを専門にしたようですが、そうなると、普通の会社では、その専門知識は役に立たない場合が多いように思います。