ワーキングプアのさまざまな実態と、そのような日本社会における社会保障のあり方を提案する本です。
いろいろ興味深いワーキングプアの例が挙がっていました。
2章では、年金パラサイト・シングル(壮年・親同居未婚者)という例が紹介されています。年金をもらっている親(当然高齢です)と同居して生活を養ってもらっている独身者のことです。高齢の親が子どもの社会保障をしているわけです。こんな人が現実にいるんだと思うと、不思議な感じがしました。こういう人は、もちろん、親が死んだときが人生の危機です。
3章では高学歴ワーキングプアが描かれます。乙の回りにもこういう人たちがいるので、生々しく受けとめました。その具体例は、次のようなものです。スクール・カウンセラー、オーバードクター、獣医師、歯科医師、ピアノ教師……。獣医師や歯科医師がワーキングプアだというのははじめて知りました。
4章は、年金保険料を払う専業主婦の話です。サラリーマンの妻は、年金保険料を払わなくていいと思っていたのですが、夫が非正規雇用者の場合は、そもそも厚生年金に加入できないので、妻は国民年金に加入しなければならないということです。収入が少ない人が年金保険料を払わなければならない(一方、高収入の正社員の妻は払わなくていい)などというあたり、明らかに変です。
5章では、遺族年金を利用して一生楽に暮らす方法が書いてあります。女性の場合、30歳を過ぎて結婚相手が見つからない場合は、60歳以上の不健康な高齢男性と結婚して扶養家族になるといいという話です。どうせ男性が先に死にますが、男性が年金を受給していれば、妻は自動的に遺族年金の受給者になり、死ぬまで年金をもらい続けることになります。遊んで暮らせます。これはすごい話です。実際、発展途上国の外国人女性が20歳以上も年上の男性と結婚して3児をもうけ、その後10年くらいして男性が死亡したため、その女性に毎年300万円が支給されているというのです。女性は出身国に子どもと帰ったのですが、当該国の平均年収の10倍の年金を日本から送金してもらうという生活をしているとのことです。
乙は、妻と仲良く暮らしていますが、もしも妻が先立ったら、30歳過ぎの女性にねらいを定め「自分が死んだ後も、一生あなたのめんどうを見る」と約束して結婚相手を探してみましょうか。
とにかく、今の日本の社会保障制度はおかしくなっています。それは、サラリーマンと専業主婦という標準家庭モデルと自営業の夫婦というモデルに当てはまらない人が多くなったからなのです。
では、これからそのような多様化した日本をどうしたらいいでしょうか。
著者の結論は、ミニマム・インカム(資力調査なしの現金給付システム)の導入です。その例として、「ベイシック・インカム」や「負の所得税」が考えられます。また、年金マイレージ制も提案されています。
著者の構想が本当に実現するかといわれると、自信がありませんが、日本の現状のおかしいところをきちんと指摘し、それを解決するためには、これしかないということを知った上で、当面の年金制度や失業保険、介護保険などの問題を見ていく必要があるでしょう。
大変おもしろい本でした。
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民主党の目玉政策である『子ども手当』は、実質ベイシック・インカムなのでしょう。
子ども手当などといわずに、正々堂々と『大人』のための負の所得税なのだと国民に説明したほうが誠実なような気がします。
このままだと早晩破綻する政策だと思っています。
民主党の「子ども手当て」は、子どものいる家庭に対して支給されるものですから、ベイシック・インカムとはだいぶ性格が違うと思います。
>民主党の「子ども手当て」は、子どものいる家庭に対して支給されるものですから・・
確かに子どものいる家庭に限定しており、国民全体を対象としていない『条件』では、そう思います。
>ベイシック・インカムとはだいぶ性格が違うと思います。
ウィキペディアによれば、「ベーシックインカム(ベーシック・インカム)とは政府が全ての国民に対して毎月最低限の生活を送るのに必要とされている額の現金(5万円〜8万円程度)を無条件で支給するという構想。」です。
であれば、毎月2万6000円を無条件で支給される民主党の『子ども手当』は、子どものいる家庭に限定していることから無条件ではない以上形式的にはそうでなくても、全く世帯所得比例等の条件を付けるわけでもなく一律2万6000円(子ども一人の毎月最低限の生活を送るのに必要な金額、という意味合いのようですが・・)を恒常的に支給するのですから、実質的にはベイシック・インカムなのだろうと申したわけです。
しかしながら、本来のベイシック・インカムの制度趣旨が『低所得者に対する社会保障』ということに鑑みれば、民主党の政策はここから若干逸脱していることから、財源も含めて早晩国民の支持を得られず破綻するだろうと思ったわけです(参考まで http://www.asahi.com/politics/update/0817/TKY200908170190.html)。
「子どものいる家庭」と、ベイシック・インカムで生活を助けてほしいと思っている家庭のズレが問題です。
今の生活弱者といえば、若い人のワーキングプア(未婚で、あえていえば結婚すらできない状況)、高齢者でそれまでに充分蓄えがなく年金だけで生活している人などが念頭に浮かびます。ホームレスや障害者・長期入院中の人なども(数はそんなに多くないかもしれませんが)含めてもいいかもしれません。いずれも子ども手当てとは無関係の人が大半です。
また、乙のように子どもがいる人でも、子どもがすでに成人していたら、子ども手当てとは無縁です。
つまり、子ども手当がもらえる人は、生活弱者の中ではかなり少ないのです。
ということでは、子ども手当てはベイシック・インカムとはだいぶ性格が異なります。
両者は発想がそもそも違うということでしょう。
民主党が『子ども手当』についてベイシック・インカムの制度趣旨を意識して導入予定しているのどうかは、その議論過程を知る由もないので、よく分かりませんが、確かに両者の制度趣旨、制度設計等を眺めるならば「たいぶ性格が異なる」ことに異論はありません。
しかしながら、繰り返しになりますが、民主党の『子ども手当』は、無色透明の形で政府から給付されるオトナ(親)への「定額給付金の恒常版」の様を呈しています。
つまり、文字通りの「子どものため」というよりも、本音ではオトナのためのいわば景気対策、もしくは票集めのバラマキ愚策なのではないのか、と個人的には勘繰っているわけです(私の職場でもそんなものだろうと思っているものが多いです。)。
もしもそうであるならば、別の相応しいネーミングも可能なのではないのかと(笑)。
そういったことから、皮肉をこめて実質的にはベイシック・インカムなのではないのか、と述べた次第です。
ちなみに、私はまさしくこの政策のど真ん中の子育て世帯ですが、もしいただければ貯蓄、投資の対象とするでしょう(笑)。
結果的に子どものためになればとは思ってはいますが、即ダイレクトに使うという形にはならないでしょう。
民主党が本気で子どもの将来を考えての政策、ひいて少子化対策だということならば、親への給付(お金のバラマキ)ではなく子どもへの教育目的限定のチケット配布のような形のほうがより趣旨に適うのではないのかと思っています。
長々と失礼いたしました。
子ども手当ての実質がばらまきであることは、その通りだと思います。しかし、表面上は少子化対策と銘打っており、実際、小さな子どものいる家庭に支給するわけですから、やはり、そう見るしかないでしょう。
これが正しい(良い)政策かどうかは、人によって意見が違うところでしょう。私は、少子化対策だとしても、もう少し別のやり方が考えられるべきだと思います。この点では轍さんと同じ意見です。
それよりは、ドラスティックに考え方を改めて、ベイシック・インカムを導入するほうがずっとすっきりするでしょう。しかし、これはこれで国民的議論が必要なように思います。日本のあり方を大きく変えるものだからです。
選挙前にそんな議論はできませんが、選挙後にはそういうのも含めて日本をどのようにしていくのか、充分議論してほしいですね。しがらみにしばられた自民党的な議論では、どうしても限界があるように思います。しかし、民主党が主導権をにぎったからといって、そのような議論ができるという保証もありません。
なかなか悩ましいところです。投票前に悩みます。
轍さんのような子育て中の人にとっては、「子ども手当て」がベイシック・インカムに見えるのかもしれませんね。
やはり、保育園・幼稚園や高等教育の負担軽減・無償化の方が良いと思うのですがね、、、まわりを見ていると、携帯電話をもったり自分の趣味やファッションにはおかけをかけながら、お金がないから子供に、、、と言っている親が多すぎますね。