内容は、スタンダードな投資入門書といったところでしょうか。
対象読者は団塊の世代です。p.80 では、団塊世代用の本だと明記されています。60歳前後の人にお薦めの本です。たとえば、本書中に登場する架空の投資家はちょうど60歳。退職金を得て、6150 万円を運用しようとしています。大変身近な例であり、退職者としてはちょうどピッタリの例なのではないでしょうか。
p.13 では、人生を30歳と60歳で区切って3段階に分けて考えるとよいとしています。学校を卒業するのは20代前半としても、就職した後は、まずは仕事を覚える時期があり、30歳くらいで一人前になるという考え方です。妥当な考え方です。そして、60歳は退職時で、これは当然でしょう。60歳を過ぎた時期がサード・エイジというわけです。これを 100 歳まで生きると仮定して人生を設計するのがよいというわけです。
p.68 には、資産クラスごとのリターンとリスクが書かれています。
| 資産クラス | リターン | リスク |
| 国内債券 | 2.50 | 5.00 |
| 国内株式 | 7.50 | 21.00 |
| 海外債券 | 3.50 | 12.50 |
| 海外株式 | 7.50 | 19.50 |
データの出所は企業年金連合会のホームページで、1970 年以降のデータに基づいた円建てによる計算結果だそうです。
以前だったら、「ふうん」という感じで、こういうデータを見ても当たり前のように感じて、通り過ぎていたでしょう。
しかし、今は、この数値が違って見えます。
海外債券が 3.5%、海外株式が 7.5% と国内並み(あるいはそれ以上)の成績を残していますが、これが円建てによる計算ということに注目するべきです。
ドル/円の為替レートを考えると、1970年ころは、1ドルが 360 円でした。2007年ころは1ドルが 120 円でした。37年間で3倍の円高になったわけで、年率に換算すると、ざっと 3% 程度の円高です。つまり、現地通貨建てだと債券が 6.6% (1.035×1.03×100-100)のリターン、株式が 10.7% のリターンということになります。
もちろん、米ドルだけが通貨ではなく、他の通貨と円の為替レートも考慮するべきですが、世界の経済のかなりの部分をアメリカが占めていることを考えれば、ドルだけを考えても、まあまあの線になるでしょう。
つまり、円建てで見ると、海外の債券も株式も、国内のものと同様に見えるのですが、海外の視点で見ると、実はかなり高いリターンがあったのです。円高でそれが相殺されて見えているのです。
海外から日本株を見ても同様で、単純な株価の上昇に加えて、円高もありましたから、日本株に投資しておくことで大きなプラスになったものと思われます。(実際、1970 年ころに外資が自由に日本株の売買ができたのかどうか知りません。たぶん規制があってできなかったのではないかと思います。)
p.183-184 では、人気のある投信を買うのはまずいということが述べられています。乙は、以前、人気のあるものを買ったりしたのですが、それではダメだというのは自分の経験で痛感しました。本を読んで失敗を避けるのもいいでしょう。失敗を経験して痛みとともに学ぶのもいいでしょう。自分の失敗がないと、こういう本を読んでもなかなか納得できないのではないかと思います。
巻末には索引が付いています。しかし、参考文献は挙がっていません。ちょっとだけちぐはぐな感じがしました。
投資の入門書としては良書だと思います。乙は団塊の世代ではないのですが、割と近い年齢なので、本書は親しみを持って読むことができました。
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