2009.12.5 http://otsu.seesaa.net/article/134738480.html
の続きです。
今回は、データによる検証でなく、論理的にこの問題について考えてみたいと思います。
「成長の罠」というのは、高成長率の新興国の株式に投資すれば、大きなリターンが得られるとする考え方のことであり、シーゲル氏によれば、その考え方は間違いだ(つまり成長の罠に捕らわれている)ということになります。
成長の罠の考え方が新興国に当てはまらないということは、高成長の新興国の株式に投資すれば大きく儲かるということになります。
でも、改めて考えると、それって変な話です。もしも、新興国株式投資が先進国の株式投資よりも儲かるならば、みんながそこに殺到し、結果的に新興国の株式が割高になって、リターンが減ってしまうからです。
これを考えていくと、つまりは、新興国も「成長の罠」が成立するのが自然だという結論になります。データを使わずに論理的に考えるとこういう結論になります。
これを基にすれば、ジェレミー・シーゲルの「成長の罠」については、以下のように考えればいいのではないかと思います。
「成長の罠」の考え方は成り立つと考えます。今後成長する新興国に投資しても、あまり成長しない先進国に投資しても、結果的に株式のリターンは変わりません(そのはずです)。
しかし、データでこれを検証しようとすると、なかなかむずかしい話になります。
シーゲル氏の本では、成長率と株式のリターンは「逆相関がある」(むしろ、あまり成長しない先進国株に投資するほうがいい)としていますが、それも間違いで、正解は、正の相関も逆の相関もない、つまりどの株に投資してもリターンには差がないということではないかと思います。
こう考えると、先進国株と新興国株の保有割合などを真剣に考えても無意味だし、どんなポートフォリオでもいいという結論になります。
もっとも、リスクは新興国のほうが大きいので、その点を重視すれば、新興国株は避けて、先進国株に投資するのがよいということになりますし、新興国はリスクが大きい分、リターンも(先進国よりも少しは)大きくなると考えて、あえて新興国株に投資し、リスクを引き受けつつやや大きなリターンをねらうというのも一理あることになります。
この問題については、さらに考えていきたいと思います。
なお、気がつくと、PALCOM さんが 2007.10.13 に似たような話を書いていました。
http://palcomhk.blog79.fc2.com/blog-entry-347.html
余談ですが、今回の一連の記事で、ブログは、書くことで考えることができると実感しました。