2006年02月23日

山崎元(2005.10)『お金をふやす本当の常識---シンプルで正しい30のルール』日本経済新聞社

 乙が読んだ本です。
 実にまじめな本で、日経ビジネス文庫ということでお値段は 667 円+税 しかかかりません。おトクです。
 30個のルールで投資関係の教訓を語っています。
 ルール1:分からない運用商品には手を出さない!
 いやあ、同感です。実感です。乙も、このルールで手を出さなかった金融商品が過去にいくつもあります。(これからもいろいろ経験するでしょう。)その時点ではこの本を読んでいたわけではないのですが、結果的には、この本のルールを実践していたことになります。
 ルール10:長期投資でもリスクは減らない!
 常識への挑戦です。でも、この本を読むと、山崎氏のいっていることの方が正しいと思います。1年間で年率マイナス40%になることと4年間で年率マイナス20%になることでは、後者のほうがリスクが縮小するように感じますが、100万円を基準に考えて、1年後に60万円になることと、4年後に 0.8 の4乗で41万円になることを比べると後者のほうが下落幅は大きいのですね。こういう考え方は、乙には目からウロコでした。
 ルール14:経済パニック論の真意を見抜け!
 経済パニック論とは、日本経済破綻、預金封鎖、資産防衛などの話です。山崎氏は、仮に「預金封鎖から資産課税」が10年後にはじめて起こる確率が 1/10 で、預金のカット率が3割の場合、期待リターンが10年後にマイナス3%、つまり、年率リターンではマイナス 0.3% にすぎないと述べています。そして、海外ファンドなどにはいろいろ問題があるので、薦められないとして、代わりに個人向け国債を推薦しています。
 ここは、乙が一番違和感を持ったところでした。
 まず、海外ファンドですが、山崎氏は、次のような理由を挙げて、否定的な意見を述べています。
(1) ファンドの手数料が高くかつ多くの場合不透明である(特に「成功報酬」と「ファンド・オブ・ファンズ」に注意)
(2) ファンドの仕組みが複雑である
(3) ファンド資産の保管に関する複雑さも問題である(配当が入金しない場合などに、自分で解決できるか)
(4) 運用者の信用度の確認が難しい
(5) 解約換金の手続きが時に難しい
(6) 営業担当者の信頼度確認の難しさもある(担当者がいなくなってもファンド資産は守られて、自由に換金できるか)
 これらの点について、乙は、次のように考えています。
(1) 確かに国内のファンドよりも手数料が高いのですが、国内よりも実際にリターンが大きい場合が多いと思います。見せかけだけでしょうか。乙にはそうとも思えないのです。
(2) 複雑であることがすなわち悪いわけではないと思います。そういう仕組みを利用しているからこそ、大きなリターンがねらえるという面があるように思います。
(3) 一般に、配当は出さないのが普通のように思います。ただただ長期に運用しているだけですね。もしも、配当が入金しない事態になれば、英語でのやりとりになりますが、これは覚悟しなければなりません。
(4) 運用者の信用度は、確かに確認が難しいです。国内では、各種の規制がありますから、いいかげんな業者はそもそも営業できないわけで、一種の守りがそこにはあります(いわば投資家が法律で守られているわけです)が、海外では、そこがよくわかりません。乙は、その会社が今まで長期にわたって運用してきていること、純資産がそれなりに大きいことをもって、まあ大丈夫だろうと(勝手に)信じています。
(5) 購入時に確認していますが、自分が解約する場合は、さほどむずかしくないと思います。問題は、自分が死んだ場合です。子供などが解約する(あるいは名義変更する)ことになりますが、海外はここが難しいです。日本ではハンコで何とかなりますが、海外ではサインです。死亡証明やら相続人の証明やらを英語でやりとりしなければなりません。相当に面倒なことになりそうです。
(6) 営業担当者は、ファンドの申込み(購入)までの代理人であって、その後はあまり関係しません。(でも、投資を継続する限り、ファンドからは報酬の一部が営業担当者に流れているんですけど……)解約はファンド会社宛に連絡しますから、担当者がいなくなってもほとんど関係ありません。
 なお、海外ファンドといっても、海外の銀行などが直接販売するファンドを買えば、(3)から(6)はほぼ問題ないように思います。これは海外ファンドとは別の話ですかね。
 次に、山崎氏がなぜ個人向け国債を推薦するのかが乙には分かりませんでした。個人向け国債は、普通の国債と仕組みが違いますが、要は普通の国債よりも 0.8% 利率が低いということです。それでなくても低い利率が、さらに低くなるわけです。変動金利ですから、これから金利が上がれば、それに連動していくということで有利な面もありますが、それにしても、こんな低金利なのが推薦できるという考え方が乙には理解できません。

 なお、最近、気が付いたことですが、山崎氏のサイトを見ると、ルール14と同じことが書かれています。
http://www.rakuten-sec.co.jp/ITS/Yamazaki/V_TOP_Yamazaki_20050318.html
文庫本よりもさらに安く、ネットでタダで読めるようになったんですね。


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posted by 乙 at 00:09| Comment(0) | TrackBack(0) | 投資関連本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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