このファンドは、ひまわり証券で扱っています。
http://sec.himawari-group.co.jp/index.cfm?fuseaction=Trade.stock&item=fund&id=11
中国・インド・ロシアの3ヵ国の株に 1/3 ずつ投資するものです。
このファンドは、伝統的なロング・オンリーの戦略と、ヘッジ・スタイルのファンド・マネージャーを組み入れることにより、絶対的な収益(アルファ)の獲得と、中長期的な資産の拡大を目指すところが、普通のファンドと違います。ま、ヘッジファンドの一種だと思えばいいでしょう。日本では、こういう運用は認められていないため、「バミューダ籍追加型会社型外国投資信託」というものになっており、購入も円建てでなくてドル建てです。
申込み手数料 4%、管理報酬 2%、成功報酬(HWM)20%、ということで、手数料は高めです。
このファンドは(株)アセット・ナレッジメントでも購入でき、http://www.asset-k.com/1/g-m-2.htm に日本語による説明があります。この実績表を見ると、運用実績は次の通りです。2000年 -6.34%、2001年 28.89%、2002年 24.27%、2003年 70.87%、2004年 11.60%、2005年 24.72%。
また、http://www.asset-k.com/1/g-m-2.htm によると2003年11月運用開始とあります。一方では、運用実績は2000年1月以降のものが掲載されています。(乙には両者が矛盾するように思えます。)
このように年平均30%という実績を見せつけられては、食指が動くというものです。
ここで検討するべきは、次のような点でしょう。
(1) このファンドの実績は本当か
オリジナルの(英語版の)資料ではどうなっているのでしょうか。
(2) この実績は妥当か
BRICs と呼ばれる3ヵ国ですから、それぞれの株価指数を調べて、それとこのファンドの実績を比べてみるべきです。
(3) どうやって購入すればいいのか
ひまわり証券、あるいは、(株)アセット・ナレッジメントだけが選択肢ではないはずです。購入する場合は、どうすれば安く購入できるでしょうか。
では、さっそく WWW で調べてみましょう。
(1) このファンドの実績は本当か
ファンド会社のHPはすぐに見つかりました。
http://www.fmgfunds.com/ および http://fmgjapan.compendia.no/ です。
そこには、2006年1月現在の概要(英語版)が掲載されていました。
http://fmgjapan.compendia.no/web/home.nsf/871134dc02d30872c1256c4b0027f903/96ec856cf78a4097c1256dbf006945b2/$FILE/R%C2%B3_A_Jan06.pdf
実績は、次の通りです。1999年 101.84%、2000年 -7.02%、2001年 29.23%、2002年 20.81%、2003年 60.44%、2004年 9.96%、2005年 21.19%。
おやおや、(株)アセット・ナレッジメント の表とは違っています。これはどうしたことでしょうか。このファンドはドル建てですから、為替レートの違いというのはあてはまりません。大きな疑問です。普通に考えれば、アセット・ナレッジメントのほうが間違いだということになりそうです。(だとしたら、どこから数字を持ってきたのでしょうか。)
それはともかく、年平均リターンが30%、リスク(標準偏差)が23%、シャープレシオが 1.25 というのはすばらしい成績です。
なお、このページで、ファンドは2003年11月開始であり、それ以前の実績は同じマネージャーがあげた実績によると書いてあります。古い実績が記載されていたのは、そういうことだったんですね。
(2) この実績は妥当か
ロシア・中国・インドの株価が過去数年でどう変動しているかをざっと見てみましょう。
まず、ロシアの株価指数ですが、RTS 指数が代表的なもののようです。
http://www.orix-sec.co.jp/shohin/toushin/guide/column-2.html から目で読み取ってみましょう。だいぶ誤差が入りますが、まあ、検討の材料くらいにはなるでしょう。
2000.1 200 2001.1 150 2002.1 270 2003.1 350 2004.1 550 2005.1 600 2006.1 950 といったところでしょうか。
これから計算した上昇率は、次の通りです。
2000 -25% 2001 80% 2002 30% 2003 57% 2004 10% 2005 60%
中国の株価指数としては、香港H株指数を取り上げましょう。
http://stock.searchina.ne.jp/data/chart.cgi?span=90&asi=2&code=HSCE&market=HSCE から目で読み取ります。
2002.1 1800 2003.1 2200 2004.1 5050 2005.1 4800 2006.1 6295 といったところでしょうか。
上昇率は、次の通りです。
2002 20% 2003 130% 2004 -5% 2005 30%
最後に、インドの株価指数は、BSE SENSEX 指数が代表的です。
http://www.jafp.or.jp/journal/jnl_data/jnl61/jnl61_3.htm によると、以下の通りです。
2000 3972 2001 3262 2002 3377 2003 5839 2004 6602
したがって、上昇率は以下のようになります。
2001 -18% 2002 4% 2003 73% 2004 13% 2005 42%
ただし、2005については、http://www.asianstocks.info/in/main.htm を参照しました。
こうして3ヵ国の平均的な株価の動きがわかると、それを足して3で割れば、3ヵ国平均の株価の動きがわかります。
次の通りです。
3ヵ国単純平均 2002 18% 2003 87% 2004 6% 2005 44%
FMGファンド 2002 20% 2003 60% 2004 9% 2005 21%
こうしてみると、FMGライジング3は、単純平均に負けています。特に、株価が大きく上昇するときに、それほど大きくは上昇しません。なぜかといえば、成功報酬 20% がかかってくるからです。資産価値の上昇分の2割が報酬として引かれては、やはり負担が大きいです。通常の報酬の 2% がかかった上にこの成功報酬ですからね。
ところで、運用成績を比較するには、株価指数でなくて、通常のファンドと比べるべきかもしれません。
しかし、乙はロシア株のファンドを知らないので、比較できません。(ロシアと東欧が一緒のファンドはあるのですが。)
中国株、インド株については、HSBC 香港のドル建ての運用成績を見てみました。
HSBC Chinese 2001 7.4 2002 -2.6 2003 105.6 2004 0.1
HSBC Indian 2001 -25.8 2002 37.8 2003 117.1 2004 27.8
中国株は、株価指数に負けていますが、インド株は株価指数を上回る運用です。普通のファンドでも、好成績のファンドはあるものです。
(3) どうやって購入すればいいのか
ひまわり証券は普通の購入方法ですが、アセット・ナレッジメントは(HPを見ると)購入手数料5%(以下)の他に、日本側手数料が 2.1% かかり、さらに年間 10,500 円の会費が必要とのことです。いやはや高いですね。ゴミ投資家の乙としては、アセット・ナレッジメントはとても手が出せません。
海外のブローカー経由でも購入できます。たとえば、http://www.squirrelyournutsoffshore.com/fmg-rising-fund.htm を見ると、ここでは通常 5% の手数料を 2.25% に割引してくれると書いてあります。やりとりは英語になりますが、どうせならこういうところで購入したいものです。WWW を探すと、手数料がもっと安いところもあるかもしれません。
ところで、乙が探した限りでは、このファンドの運用額(純資産額)がわかりませんでした。あまり少ないのであれば、そもそも考慮の対象外ですから、こういう情報を WWW に掲載しないのは致命的欠陥だと思います。
ここまでで検討してきたように、FMGライジング3は、大きな実績を上げているファンドですが、しかしその成績は単純な3ヵ国の株への分散投資のほうがよいということになりました。これでは、せっかくヘッジファンド的手法を採用していても、あまり意味がありません。株価が下落する局面で、もしかすると、あまり下落が生じない(むしろ上昇する)というメリットがあるのかもしれませんが、それは、そうなってみなければわかりません。BRICs 諸国への投資では、継続的な経済発展を基本に考えるわけで、連続する株価の低迷は考えにくく、むしろ、中長期に渡って株価が上昇傾向にあるからこそ注目を集めているわけです。だとすると、3ヵ国の株を対象とする普通のファンドを買っても充分ではないでしょうか。
ファンドを一つ買って、分散投資が実現できるという意味はありますが、それなら、3ヵ国それぞれに投資する適当なファンドを 1/3 の金額で三つ買うほうがいいのではないでしょうか。
そんなわけで、乙は、FMGライジング3 に投資しないことにしました。
上の話は、あくまで乙が自分の投資判断をするために考えたことであって、数値は(グラフを目で読み取ったりして)いいかげんなものです。その意味で要注意であることを付記しておきます。
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