2006年03月03日

澤上篤人・村山甲三郎(2005.12)『長期運用時代の大本命! ファンド・オブ・ファンズ入門』実業之日本社

 乙が読んだ本です。
 「さわかみファンド」の代表者と「ありがとうファンド」の代表者がやさしく書いたファンド・オブ・ファンズの入門書といえるでしょう。
 第1章は、澤上氏の執筆で、これから10年で個人が100兆円くらい投信を買っているはずだという見通しが述べられます。そうかもしれません。この低金利時代では預貯金が嫌われるのも道理ですからねえ。乙も、そう考えて資産運用を考えるようになったのです。
 第2章から第5章は村山氏の執筆で、この本の中心をなすものです。第2章は投信入門で、はじめて投信を購入する人むけに書かれており、記述は冗長で、あまり読む意味がありません。第3章からようやく本論にはいるという感じになります。第3章では、どういうファンドがいいファンドかを説明しています。乙もこの記述に賛成です。第4章では、世界のファンド・オブ・ファンズのいろいろを紹介しています。おもしろい記述なのですが、登場する会社がイニシャルでしかなく、この記述が本当かどうか、確かめようもありません。ここで実名を出してしまったら、「ありがとうファンド」に投資するのでなくて、その会社に投資しようということになってしまいますから、名前を出そうにも出せなかったのでしょうが、これでは、間接的に「ありがとうファンド」の宣伝をしていることになり、本を出すことの意味が半分くらい失われます。第5章は、これからの日本でのファンド・オブ・ファンズのあり方を述べたもので、主張は理解できます。
 第6章は、澤上氏の執筆で、郵貯が投信ビジネスをするなら、こんなふうにしたらどうかという一つの提案です。郵貯が一つのファンド・オブ・ファンズになり、いろいろなファンドに運用を競わせて、いいファンドを育てようということです。以前、さわかみファンドの通信にも書かれていたことの繰り返しですが、乙は、この考え方に強く引かれます。これが実現するといいですね。郵貯の資金の全部でなくても、一部がこうした形に回るだけで、日本は劇的に変わるように思います。
 第7章も澤上氏の執筆で、「おらが町の投信」をファンド・オブ・ファンズで作ろうという提案で、9割は長期運用に回し、1割は地元に投資するファンドという提案です。乙は、ここの記述が今ひとつわかりませんでした。ファンドの存在意義が資産の着実な成長を目指すものだとすれば、地元に一定割合の投資をするというファンドがどのくらい支持されるものでしょうか。投資家の愛郷心をくすぐることで投資金額が増えるものなのでしょうか。普通には、投資家は投資の効果があるところに投資するものであって、「地元だから」という理由で投資するものではないと思うのですが。また、長期投資の部分は、別のファンドに委託すればいいと思いますが、地元に投資する部分は、ファンドが自力で運用するしかなく、それはつまり信用金庫や農協などが行っているビジネスへの参入になるわけで、うまく行くかどうかは何ともわかりません。さらに、この計画では集まる資金の多少によって意味づけが大きく変わってきます。今の日本で、「おらが町の投信」に資金が集まるようなことがあるでしょうか。いったん資金が集まりはじめれば、口コミで広がっていくことも考えられますが、そうなるまでの立ち上げが大変です。個人資産のたった2%しか投信に向かっていない現状なのですからねえ。乙は、そんなことを考えて、この第7章は、夢物語だなあと思いました。
 さて、この本を読み終わって、乙はファンド・オブ・ファンズに対する疑問が解決されていないように思いました。第1に、ファンド・オブ・ファンズは、他のファンドに投資するので、それ自体をいくら低コストにしても、トータルなコストは他のファンドを直接購入する場合に比べてどうしても高くなってしまうことです。第2に、それと関連して、いいファンドが見つかるならば、直接そのファンドに投資すればいいのであって、ファンド・オブ・ファンズに投資する意味は何なのかということです。
 個別の株式に投資すると、投資家がそれぞれの会社について調べることになり、それが大変だからファンドという仕組みができたと思います。同じ理屈で、数千ものファンドがあって何がいいのかわからないからファンド・オブ・ファンズができたと考えることもできるでしょう。つまり、ファンド・オブ・ファンズに払うコストはいいファンドを選ぶプロセスを代行してもらうことだということになります。
 もしかしてファンド・オブ・ファンズは分散投資が目的なのかもしれません。だとすると、数種類のファンドに投資するのでなく、数十種類から数百種類のファンドに投資するべきかと思いますが、乙は、ファンド・オブ・ファンズでそんなにたくさんのところに分散している例を知りません。たいてい数種類ではないかと思います。
 もしも、ファンド・オブ・ファンズが投資家に代わっていいファンドを探してくれるとすると、株式ファンドを個別の株購入の指南役として使うことが可能なように、ファンド・オブ・ファンズに最低金額(1万円?)だけ投入して、そのファンド・オブ・ファンズがどこに投資しているかをチェックし、そのファンドに投資家が大部分の資金を投入するようなやり方が成立しそうです。情報提供料だと思えば1万円は安いものです。(しかも、その1万円はだいたいそのまま返ってくることが期待されるのですから。)いや、それ以前に、ファンド・オブ・ファンズを募集する目論見書を見れば、その程度のことは書いてあるはずですね。
 乙は、投資家の一番知りたいところを隠してこの本が成立したかのような印象を持ちました。

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