本書を一読すると、日本の航空行政がいかにゆがんでいるか、手に取るようにわかります。
静岡空港の開港延期問題、成田空港の問題、羽田の国際化の問題、日本全国で100近くにもなる空港の数の問題、関西の3空港の問題、空港整備特別会計の問題、韓国・中国・シンガポールなどの空港との国際競争の問題、オープン・スカイの問題など、あらゆる面に関して一通りの知識が得られます。
これからの日本の発展のためにも、空港は必要だと思いますが、現状を見ると、とんでもない事態になっています。そして、政府(国土交通省)には、このような現状をどうするかというビジョンもないのです。
空港だけが日本の問題ではありませんが、今の日本の諸問題の象徴のようにも思われます。
これだけねじれてしまった空港問題ですから、簡単に解きほぐすことはできないかもしれませんが、まずは、本書などで空港問題の概観をつかむことが第1歩でしょう。次に、国土交通省あたりが中心となって(ま、民主党でもいいですが)長期的な航空行政のビジョンを固めるべきです。その上で、日本の空港はどうあるべきか、航空会社はどうあるべきかを考えないといけません。
空港には多額の税金がつぎ込まれているわけですから、空港問題を考えることは税金を考えることでもあり、日本をどうするべきかという問題ともつながってきます。
本書は、日本航空の破綻の前に出版されていますので、その点はちょっと記述が古いのですが、本書で指摘されている諸問題が解決しているわけでもありませんので、今でも読む価値があると思います。
乙が一番おもしろく思ったのは、p.242 からのエピローグで、現在のジェット機はエンジン技術の改良で静かになり、YS-11 以下の騒音しかないという話です。これだけで、騒音問題を考慮して海上に作られた関西空港の意味が減少してしまいます。(同じ理由で伊丹が継続的に使われ、関西空港が赤字になったりするわけですが。)
こういう世の中の変化を受けとめ、きちんと対応していくとなると、確かにむずかしい問題なのでしょうね。
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