まず、このファンドの概略ですが、以下に説明があります。
http://www.globalprice-inc.com/funds/l012.html
年平均利回りで 20% ものリターンをあげており、過去最大利回りは 133% ということで、驚いてしまいます。実績の詳細は、以下の通りです。
http://www.globalprice-inc.com/funds/m4.htm
1997年から2004年末までのリターンを計算してみると、
1×2.33×1.26×2.25×1.08×1.39×1.21×1.17×1.35=約20倍
ということで、大変な実績です。
このファンドの詳しい説明は、以下の pdf 文書(英語)をご覧下さい。
http://www.globalprice-inc.com/en/funds/ImpactDD0211.pdf
http://www.globalprice-inc.com/funds/disc.pdf
さて、ではなぜ乙がこのファンドに投資しないと決めたのか。理由は五つあります。
(1) 運用している資産が少ないこと
運用資産は2005年段階で 283 万ドル(約3億円)で、かなり少額です。一般に投資信託はこの数倍程度以上の運用資産がないと機動的かつ安定的な運用ができないのではないかと思います。http://otsu.seesaa.net/article/12678037.html を参照してください。その意味で、現在の運用資産額は少なすぎます。
少額資産を運用するということは不安定な結果を招くと思います。いい成績を残すこともあるでしょうが、悪い結果になることもありそうです。
(2) 今後も今までと同様の高い運用成績が残せるか疑問であること
最近、新規契約者が急増しており、その意味でファンドの性格が変わってきています。
2001年末以降の年度末の純資産総額が公開されていますので、それを基に計算してみましょう。
2005年10月現在で、純資産総額が 2,836,097 ドルで、2004年末は 1,922,563 ドル、2005年の年間償還額(おおざっぱにいえば解約した金額です)が 71,806 ドルで、この間 11.24% の利回りを達成したということです。すると、2004年末からの運用結果が 1,922,563×1.1124=2,138,659 ドルになります。2,836,097 ドルとの差額に、解約した人の分 71,806ドルを加えて、769,244 ドルが2005年の新規契約額です。以下、同様の計算をすると、毎年だいたい3割くらいの新規契約者がいることになります。このファンドの好成績に引かれてここ数年の新規契約者が急増しているのでしょう。それは乙にも理解できます。このように新規契約者が多いから、2001年末の純資産 521,479 ドルが4年で5倍以上にもなってしまうわけです。
この調子で新規契約者が増えていって、それまでと同様のリターンが出せるでしょうか。この数年でファンドの性格が大きく変わってしまったととらえるべきではないでしょうか。端的にいって、今までと同様の成績を出すことは信じがたいです。
(3) 大変な好成績を残している期間は、どんなファンドだったのか、疑問が残ること
2001 年以降は、年度末の純資産総額が公表されているので、ファンドの運用のようすがわかります。しかし、それ以前は純資産総額が公表されておらず、どんなであったかがわかりません。そこで、2001年以降の傾向を過去に延ばして当てはめて各年度末の純資産総額を推測してみましょう。
毎年、前年度末の資産と比べて3割程度の新規契約者があったものとして計算します。年間の騰落率が公表されていますから、それを基に計算します。
2000年末は、2001年末の純資産総額 521,479 ドルを2001年の騰落率 38.95% で割って、さらに(3割の新規契約者がいるので)1.3 で割ります。すると、521,479/1.3895/1.3=288,692 となります。これが2000年末の純資産の推定額です。
同様の計算をすると、1999年末=204,617 ドル、1998年末=69,728 ドル、1997年末=42,441 ドル、1996年末=13,973 ドルとなります。
133% という驚異的な利回りを出した 1997 年には、運用資産が1〜2万ドルしかなかったという計算になります。このファンドは1万ドル以上の申込みですから、出資者はひとりかふたりだったことになり、これは話が変です。どこかが違っているのでしょう。もしかして、毎年の新規契約者が前年末の3割いたという仮定が間違っていたのかもしれません。
そこで、新規契約者は解約者と人数・金額が同じだったとしましょう。投資家の数がまったく増えなかったと仮定するわけです。すると、2000年以前の純資産の総額の推定は、次のようになります。
2000:521,479/1.3895=375,300
1999:375,300/1.0853=345,803
1998:345,803/2.2573=153,193
1997:153,193/1.2638=121,216
1996:121,216/2.3363=51,884
133% という驚異の騰落率を記録したときは、運用額は数万ドルだったと推定されます。
乙の計算は、かなりいいかげんなものですが、それにしても、驚異的な利回りを達成したのは、運用額がきわめて少なかったときのことだということはいえると思います。
(4) 運用担当者がどうやって利益を出しているのか、どうも理解できないこと
乙の英語力の問題かもしれませんが、目論見書を一読しても、よくわかりませんでした。
http://www.globalprice-inc.com/funds/l012.html では「毎月の運用手数料等はかかりません!」といいますが、そのことと、英語版の目論見書の内容とは、大きく異なるように読めます。目論見書では、いろいろ手数料がかかる(しかもこれがけっこう高い)ように読めます。
だいたい、投資家から運用手数料を取らずに、どうやって運用担当者が利益を出しているのでしょうか。乙には理解できません。「自分が理解できないものには手を出さない。」これが正しい態度だと思います。
(5) ネット上で情報が得られないこと
今や、評判を聞くにはネットが便利です。乙も、ネットをそのように利用させてもらっています。
しかし、このファンドや運用担当者のマイク・ワグナー氏について、ネットで調べても、グローバル・プライス社以外ではほとんど何も見つかりません。もちろん英語で検索しました。
私募ファンドの場合は、いちいちネットに掲載したりはしないのでしょう。しかし、何も評判が聞けないのは寂しいです。これだけ実績を上げているファンドですから、誰かがどこかで「すばらしい!」と声を上げていてもいいのではないかと思います。それがないのはどうしてでしょう。
新規契約者が激増しているのは、乙にも理解できます。平均で 20% のリターンが得られ、しかも1万ドルから申込みできるとなれば、心引かれます。乙も、振込の準備をして、申込書を書きました。しかし、手続きをする前に、もう一度落ち着いて考えてみて、疑問が残るように思ったので、方針を変更し、申し込まないことにしたのです。
乙は、このファンドをけなすつもりはありません。きっといいファンドなのでしょう。グローバル・プライス社は実在する会社です。ただ、乙はこのファンドに申し込まないという判断をしたというだけの話です。
投資家は、自己責任で(自分で納得して)運用先を選ぶべきで、これが大原則です。
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