http://diamond.jp/articles/-/7684
その中で、辻広氏が「日本の労働者を二つに大別すれば、「大企業に勤める男子正社員とそれ以外」という分類になる。「それ以外」というのは、非正社員であり、女性であり、中小企業に働く人々である。」と明確に語っている点に驚きました。確かに、建前はともかく、実質的にこのような二分法でものを見ると、日本社会がよく見えます。
ちなみに、乙とその家族を見ると、やはり、大企業男子正社員とそれ以外に区分できるようです。乙自身と息子の一人は「大企業正社員」の側で、乙の妻ともう一人の息子は「それ以外」に属します。両者で給料の総額なども違いますし、さらには、それ以外の福利厚生などでの差が結構ありそうです。
続いて、辻広氏は2ページで「正社員と非正社員の賃金格差は20代ではそれほどでもなく、30代、40代になるにつれて拡大していく。正社員が年功賃金の恩恵を受けるからである。ここで、二重の格差が生まれていることに気がつく。正社員と非正社員の格差に加え、正社員のなかでの中高年と若年層の格差である。」と述べ、年齢格差にも言及しています。
辻広氏の主張は明解です。こうして「同一労働同一賃金」の実現を回答として主張するわけです。
乙は中高年層ですから、その立場は、言い換えると、今後給料を減らされる側の人間です。その立場では、やはりいいたいことがあります。若いときは、年配社員と同様な仕事をして、しかし、給料はかなり安く、いわば辛抱と我慢を強いられてきたわけです。そして、中高年層になって、いざ、会社に貯金しておいた分を取り戻そうとすると、若い人と「同一労働同一賃金」だといわれて減額されるとなると納得できません。
実は、乙が若いときは公務員だったので、上記の言い方(社員・会社)は厳密には当てはまりませんが、公務員時代に周囲を見渡してみると、高年層で、仕事にはいかにも不適当な人が、郵便の重さを量って切手代わりの白いシールを料金機で印刷していたりしました。彼には一体給料がいくら払われていたのだろうなどと思いました。
今の乙は民間に勤務していますが、まあ世間並みの給料をもらっており、総額は若い人より明らかに多くなっています。それは「会社に対する貯金」ではありませんが、「日本社会に対する貯金」の反映だと思っています。
そういう現状を変えて、給料を減額するといわれるとつらいものがあります。
どうしたらいいか、乙には名案がありませんが、最高裁の判例などで正社員の保護が打ち出されてしまっている現状で、法律や判例に反しない形で制度を改めるには、時間が必要だと思います。根拠はありませんが、ざっと20年くらいでしょうか。一気に改革するのでなく、20年くらいかけて年齢層ごとの賃金カーブを次第に変えていくほうがいいのではないかと思います。
とはいえ、このようなやり方をすると、今後20年、賃金総額がじんわりと減っていくことになります。(役員報酬は現状のままとすれば、会社役員の所得水準は、勤め人一般から見れば、相対的に高くなっていきます。)
今のままの制度では日本は長期的に沈み行くだけです。しかし、変革には痛みが伴いますから、非常に困難です。
今までの日本の経済的停滞は20年にも及びましたが、それはさらに今後も(数十年?)続くだろうと予想しています。
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今の若い世代は乙さんとは違い貯金分を取り戻すことはできないかもしれないし貯金など元々ないのかもしれない。でも中高年は自分が退職してから同一労働同一賃金にしてくれと誰もが願う。切りがない。