2010年04月06日

中高年層と若年層の給料格差の解消

 昨日の記事
2010.4.5 http://otsu.seesaa.net/article/145646847.html
に対して、「さぼ」さんからコメントをいただきました。
 乙もコメントにしようと思ったのですが、ちょっと長くなってきたので、本文として書きます。
 実質的には、「さぼ」さんへの乙のコメントであり、昨日の記事への補足でもあります。

 日本の中の若者と中高年の世代的対立はけっこう鋭いものがあります。典型的には「同一労働同一賃金」でないところです。しかし、両者が妥協できないわけではありません。昨日の本文中にも書いたように、ポイントは「時間をかける」ことです。
 だんだん変えていけば、いわば中高年の貯金がだんだんなくなっていくことと同じような効果が起こります。そのようにして変えていかないと、みんなが納得できないと思います。
 年金だって、今の高年者が一番トクをしているわけですが、中高年者だって、若者だって、制度をだんだん変えるようにして、みんなで少しずつ痛みを感じつつ、20年程度で制度を変えるようにするべきでしょう。
 あるいは、制度を一挙に変えるとしても、それまでの加入期間分はそれまでの計算に基づいて支給するとすれば、事実上、ゆっくりとした変化になります。
 同一労働同一賃金の話も同様だろうと思います。
 中高年層だって、家族の中に(自分の子供として)若年層を抱えていますから、若い人の痛みは理解できます。だから、時間をかけて日本社会が変わるならば、将来の日本に望みをつなぎつつ、みんな我慢するだろうと思います。
 しかし、「クビ」などを通じて、一挙に変えようとすると、中高年層の反乱が起きるでしょう。「クビ」は個人の問題であり、社会全体の問題ではありません。こういう解決のしかたは大きな摩擦を産みます。

 日本の企業では、賃金制度として年齢給制度があるところが多いと思います。したがって、年齢が上がれば給料が上がる、いわゆる定期昇給が存在することになります。年齢給部分を一挙にゼロにすると、日本社会全体がきしみます。中高年層の給与が大幅ダウンになる場合が続出するでしょう。年齢給分を全従業員で割り算して平等に分けるようにすると、その企業の中高年層の給与が大きくダウンするとともに若年層の給与が急激にアップします。これも社会不安のタネになります。(こんなことで企業としてやっていけるでしょうか。)ある時点での年齢給を個人ごとに固定すれば、定期昇給なしとなり、これは維持可能です。しかし、定期昇給がないままに、なぜ年齢が高い人は高い年齢給をもらっているのかなどと考えたら、こういう仕組みは長持ちしそうにありません。
 そこで、年齢給の重みを次第に小さくしていき、たとえば20年かけて年齢給ゼロにするようにします。昨日の記事で「賃金カーブを少しずつ変える」と書いたことは、典型的には、こういうことです。こうすると、あまり痛みを伴わずに、「同一労働同一賃金」が実現できます。これを「中高年層の逃げ切り」と考えるのは間違いです。(そういう面があることは事実ですが。)何と言っても、働く人の給与を下げることなど、労働条件の不利益変更は、日本ではそう簡単にできることではないわけで、そういうさまざまな法律や判例や習慣やらが今の日本社会を形作ってきたわけですから、それを一挙に変えることは好ましくないと思います。
 この点に関して「20年後では遅い。数年以内に行わないと日本沈没だ」と考える人もいるでしょう。しかし、そういう主義主張は、今の日本では絶対に多数を握れず、無視されるだけです。団塊の世代は人口が多く、しかも選挙での投票率が高いことに留意してください。
 乙は、日本はゆっくり変わるしかないと思います。その分、沈没のスピードが遅くなりつつ、沈没方向に進んでいます。
 日本は20年持たずに沈没するかもしれません。そのときはそのときです。
 日本が沈没するとは、ほとんどの会社が倒産し、みんながクビになって仕事がなくなることです。政府も機能しなくなっている可能性が高いです。しかし、その結果新しい社会が生まれるということになるので、むしろ好都合なのかもしれません。中高年層としてはこういう「革命」は歓迎しませんが。
 なお、こういう沈没のケースでは、公務員が一番強いと思います。もっとも、税金を払う人がいない場合に、どうやって公務員の給料が払えるのか、乙は知りませんが、国債でも発行するのでしょうかね。いや、公務員もリストラで大半はクビになってしまうのでしょうか。
 なお、今回の議論は机上の空論であって、考え方を述べたまでです。実際に個々人の給料が時間とともに下がらないようにして年齢給の分を下げていくことが可能かどうか、20年でゼロにできるのか、自分でシミュレーションをしたわけでもないので、わかりません。


posted by 乙 at 05:17| Comment(9) | TrackBack(0) | 社会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
いつも読ませて頂きありがとうございます
初めてのコメントです
「同一労働同一賃金」についての一考
例えばスーパーのレジ係りで一年生とベテランで「同一労働」です。「労働とスキル」と「年齢給」との兼ね合いをどうするか?
医療では「一般医師(あえて)」と「スーパードクター」の同一医療は同じ医療費です
見た目の「同一労働」の評価にスキル(年齢給的?)をどう組み込むか・・・試行錯誤ですね
  駄文にて失礼します。 
Posted by クニ34 at 2010年04月06日 11:44
クニ34様
 労働とスキルの問題は何ともいえません。一般医師とスーパードクターのような「専門職」の場合は、年齢が上がった方が経験が多くなり高給を得ることが正当化されますが、そうでない場合もあります。レジ係であっても、全くの初めての人と1〜2年の経験者とではだいぶ違うと思いますが、その先はどうなんでしょうか。
 このあたりの「評価」は重大な問題ですが、今回はここまで踏み込まずに、一番単純な場合として、同一労働同一賃金(年齢によるスキル差がない場合)を考えてみました。
 こういうことが実現するならば、年齢=経験によって変わっていく場合は、現状との変更点が大きくないので、割と簡単に実現できそうに思います。
Posted by at 2010年04月06日 12:19
同一労働同一賃金のためには同一性の判定が課題と思いますが、皆が納得出来る判定が出来ると仮定して、緩やかに移行するには一番高い人の賃金を上げず他の人の賃金をそこまで上げられるまで何年もかけて徐々にインフレで達成する。実際のやり方はそういうことになるのでしょうね。
Posted by truant at 2010年04月06日 17:02
truant 様
 はい、たぶん、そんなやり方になると思います。
 というか、それもまた一つのやり方です。
 他にも考えられることはあると思いますが。
Posted by at 2010年04月06日 17:36
20年もかけていたら若者が中高年になり今度は死守する側に回るのでは。国が1律に制度を決めるのではなく、年功序列、能力給重視、クビ、終身雇用にするのかはその企業が自由に決めればよくそれで傾いた企業は退場してもらった方がいいような。雇用の流動性が低いのが問題だと思います。
Posted by さぼ at 2010年04月07日 16:38
さぼ様
>20年もかけていたら若者が中高年になり今度は死守する側に回るのでは。

 そうはなりません。
 もしも、乙の予測のように日本がゆっくりと変わるとすれば、今の若者は、昇給のペースが(今の中高年よりも)遅くなるので、中高年になった20年後には、そのときの制度を死守するほどの価値がなくなるのです。

>国が1律に制度を決めるのではなく、年功序列、能力給重視、クビ、終身雇用にするのかはその企業が自由に決めればよくそれで傾いた企業は退場してもらった方がいいような。

 それがいいと思う人が多ければそうなるでしょうが、今の日本では、法律、判例を無視しなければ、そうはなりません。
 国が一律に決めているわけではないのですが、法律と判例を守ろうとすれば年功序列と終身雇用を前提にするしかないと思われます。そうでない制度を導入しようとすると大きなコストがかかります。
 ということは、今までとまったく違う新しい法律を定めればいいわけです。しかし、これがまたむずかしいものになります。本文中に述べたように、中高年は、人口の多さと投票率の高さがあるので、日本の中で強い集団なのです。
 雇用の流動性が低いことが問題なのはその通りですが、要は、どのようにしてそれを変えられるかということです。
 今の法律と判例を前提にすると、かなりの難問です。
Posted by at 2010年04月07日 17:11
乙様
そうですね。中高年は選挙においては強い集団であり、必ずしも正論が通るわけではないので自分の考えが現実的ではないのは感じています。「希望は戦争」の揶揄が本質的にピッタリきます。
法律的には解雇は可能だったが判例で事実上は不可能になったような覚えがあります。
傾くなら一気に傾いてリセットしてくれた方がフェアでもあり非正規の若者にとってはマシな気がします。それとも傾くスピードを抑えるために労働者が今以上の激務をこなして支え続けるのが幸福なのかは人それぞれなのでしょうね。
Posted by さぼ at 2010年04月07日 23:11
さぼ様
 赤木智弘の議論ですね。
 seesaa の中には、この議論の経緯をコンパクトにまとめた記事がありました。
 他人の記事の紹介で、気が引けますが……。
http://o-tsu.seesaa.net/article/142788435.html
Posted by at 2010年04月08日 04:47
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