第1章 再雇用・転職・独立、どれを選んでもイバラの道
第2章 なけなしの老後資金が水の泡に
第3章 夢の海外移住の現実
第4章 田舎暮らしのスローライフは意外に疲れる
第5章 退屈地獄を乗り切る趣味探し
第6章 定年夫は邪魔な存在か
第7章 脱会社人間! 悔いなき人生を
こうやって目次を見ると、本書で何が論じられているか、ほぼ明らかになってしまいます。どの章も、苦労する人たちの例が満載で、なかなか思うような「定年後」はないことがわかります。
221ページの本ですから、これらのさまざまなトラブルに対する対処法まではとても書けません。それはわかるのですが、読んだ後、どうにもいらだち感がありました。もちろん、トラブルはごめんですが、ではどうしたらいいのかということが本書ではあまり書いてないのです。著者に言わせれば、そういうトラブルは千差万別なので、本に書けるようなシロモノではないということなんでしょう。
この中で乙が直接関心があるのは、第2章の投資関連と、第3章の海外移住でした。
第2章は、いろいろな落とし穴の紹介にとどまっており、どうしたらそういう落とし穴に入り込まない投資行動が可能になるかがほとんど書かれていません。「投資しない」という態度もあるでしょうが、お金に働いてもらうためには、ちゃんとした投資をしたいものです。しかし、そういう向きの人にはあまり役に立ちません。
第3章は、失敗例を数多く載せていますが、ここも、うまく海外移住生活を続けるにはどうしたらいいかがほとんど書かれていません。まあ、失敗例から学べることもあるとは思うのですが、いかんせん30ページ程度の記述ではちょっと触れた程度で終わってしまいます。
第1章は、乙の場合、関係なさそうです。ある程度の歳まで仕事が続けられそうですし、その後はもう働く予定はありません。
第4章は、乙の場合、田舎の出身で、田舎の人間関係をわずらわしく思っていますので、自分で田舎暮らしをしようとは思っていません。
第5章は趣味の話ですが、乙は乙なりの趣味(自分でそう思っているもの)があるので、まあ定年後の人生も楽しめるものと考えています。
第6章は、家庭の中の話ですが、乙の場合、夫婦仲はいいし(乙がそう思っているだけで、妻は必ずしも同じ考えではないかもしれませんが)、結婚以来ずっと共働きでしたから、乙が息子たちの食事当番をしたり保育園の送り迎えをしたりして、それなりに家事をしてきました。その意味では、濡れ落ち葉的存在になることはないと思っています。
というわけで、通読してみると、タイトルほどにはインパクトのある内容とは思えませんでした。
著者はノンフィクションライターだそうですが、もう少し専門的に詳しい知識を得てから本をまとめるほうがいいのではないかと思いました。今は、いかにもライターが各種情報を集め、急ごしらえで書いた本という印象です。
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