http://www.alt-invest.com/aic/question2010/index.html
会員中 1,254 人の人が回答したということですから、なかなかのものです。この種の調査では、回答者数がある程度大きくないと結果が信頼できないのですが、1,254 人といえば、十分な数でしょう。
乙なりにこのアンケート調査の結果を見た感想を書いておきます。
(1)回答者の属性分布(1)
http://www.alt-invest.com/aic/question2010/001.html
年齢別の単純集計の結果が出ています。
10代は1人、70代以上は9人しかいませんから、それぞれ、20代と60代に含めて集計するようにするべきでした。20代以下、60代以上というくくりになるわけです。最初に示す年齢分布だけは、今のままでもいいかもしれませんが、後から出てくるクロス集計などではぜひそうするべきです。
(2)回答者の属性分布(2)
http://www.alt-invest.com/aic/question2010/002.html
金融資産(世帯保有額)別の単純集計の結果が出ています。
1,000万円以上1億円未満が 59%、1億円以上が 8% という結果になっていますが、これでは、1億円以上の世帯が少なすぎて、金融資産別にデータを見ていくときなど、クロス集計の結果が不十分になってしまいます。
1,000 万円〜3,000 万円、3,000 万円〜1億円 のように分けておくべきでした。あるいは、調査時には、細かく区分するか、実際の金額を直接記入するように求め、集計時に適宜まとめるような処理をしてもよかったと思います。乙だったら後者のやり方をおすすめしますが。
(3)投資対象について(1)
http://www.alt-invest.com/aic/question2010/003.html
ここでは、年代別にどの国・地域にこれから投資したいかを尋ね、クロス集計しています。
コメント欄で「アジア新興国への投資意欲がシニア層で強く見られる」と述べていますが、これはミスリーディングです。
表を見ると、確かにそう見えるのですが、上で見たように、70代以上は9人しかいないのです。1人が回答すると 11% という結果になります。つまり、67% というのは 6 人がそう回答したということにすぎません。回答者の数が少ないので、この比率には信頼性がありません。ですから、全体の傾向 53% と比べて、さほど変わっているとはいえず、いわば誤差の範囲にすぎないのです。
つまり、シニア層(70代以上)について云々することはできないし、もしもしたら、結果を読み間違えて、記事を読む人を間違った方向に誘導してしまうのです。
(4)投資対象について(2)
http://www.alt-invest.com/aic/question2010/004.html
ここでは、質問として「もし「海外投資を楽しむ会」会員のアイディアから生まれた金融商品が販売されたら?」と尋ね、回答の選択肢として「自分の考えに合えば、ぜひ投資してみたい」「自分の考えに合えば、前向きに検討する」「自分の考えに合っていたとしても、あまり気が進まない」「全く興味がない」の四つを挙げています。しかし、この選択肢は変です。
もともと、質問は、これこれに投資したいかと尋ねているのですから、選択肢の中に「自分の考えに合うかどうか」を含めて選んでもらうというのは不要です。そもそも「自分の考えに合わない」ものならば、投資意欲はわかないものです。
記事では「「自分の考えに合えば」という前提だが、当会から生まれる金融商品には前向き。」とコメントしていますが、これも態度としては問題でしょう。自分の考えに合うものなのですから、「当会」が販売しようとどこが販売しようと、まずは前向きに検討するのが当たり前です。
ここの質問文は、「もし「海外投資を楽しむ会」会員のアイディアから生まれた金融商品が販売され、それが自分の考えに合っていたら?」とするべきです。
もっとも、そういう質問をしてどういう意味があるかはむずかしいところですが。
もう一つの質問「投資経験のある金融商品」では、外貨預金の経験者が 55% もいたことに驚きました。これは、外貨で投資するために、円を外貨に両替したあと、実際に投資に回さずに端数が銀行口座に残っているような場合も含むのでしょうか。それは含まずに、定期預金のようなものだけに限定しているのでしょうか。
乙の場合、前者ならば、「経験あり」となりますが、後者ならば「経験なし」になります。
そして、外貨預金をするくらいなら、外貨 MMF のほうがいい
2006.9.21 http://otsu.seesaa.net/article/24103836.html
というのが常識だと思いますが、外貨 MMF の利用者は、ここでの選択肢に該当しないようです。これは選択肢に含めておいたほうがよいと思いました。
(5)投資対象について(4)
http://www.alt-invest.com/aic/question2010/006.html
ここでは、これから投資したい金融商品を、金融資産の金額別にクロス集計しています。
しかし、この場合、金融資産1億円以上の人は101人と少数派なので、注意が必要かもしれません。
表では、1億円以上の人が全体とかなり異なる回答をしているように見えますが、本当にそうかどうか、注意が必要だろうと思います。こういうクロス集計をするなら、上の(2)で述べたように、区分をもう少し考えておくべきでした。
ま、これでもいいかもしれませんが。
(6)投資意欲について(1)
http://www.alt-invest.com/aic/question2010/007.html
ここでは、現在新たに投資にあてることができる金額を集計しています。
しかし、これは、単純集計してもあまり意味がなく、世帯年収別のクロス集計が必要なところではないでしょうか。
いうまでもなく、年収によって投資可能金額は大きく変わってくると予想できるからです。
全体として、集計・分析に甘さが目立ちますが、それでも、こういう調査が行えたことはすばらしいことだと思います。
ただし、「調査のねらい」がはっきりしないように感じました。会員がどういう人かを知りたいということなのでしょうか。
今後、さらに類似の調査をする場合の提案ですが、まず、どんな質問をするといいかを会員に尋ね、幅広く提案を集め、それを整理分析して、必要な質問文を考えるといいのではないでしょうか。
日経マネーの調査については、以前何回かブログに書きましたが、
2010.2.25 日経マネーの個人投資家アンケート調査 2010
http://otsu.seesaa.net/article/142080098.html
2009.2.24 日経マネーの個人投資家アンケート 2009
http://otsu.seesaa.net/article/114724836.html
2008.3.2 日経マネーの個人投資家アンケート
http://otsu.seesaa.net/article/87896547.html
2008.2.13 日経マネー(編)(2007.10)『8841人アンケートでわかった!「勝ち組」投資家の法則』日本経済新聞社
http://otsu.seesaa.net/article/83789783.html
それらよりはきちんとしているように思いますので、今後に期待したいところです。