2010年04月16日

大前研一(2008.11)『ロシア・ショック』講談社

 乙が読んだ本です。
 大前研一氏の本だということで読んでみました。
 内容は、ロシアがどういう国か、その現状を解説するもので、あまり投資に関連するところは多くなかったように思いました。
 p.64 ロシアの特徴の一つとして極めて高い教育水準があるとしています。乙はこういう見方をしていませんでしたので、ここでの議論は興味深く読みました。ロシアは BRICs の他の国と違った面があるということです。
 p.100 では、ロシア人は無条件に日本が好きだという話が出てきます。これも意外でした。日ロ関係を考える上では、これは考慮に値する事実だと思いました。
 p.132 では、ロシア進出の心得の一つとして「腐敗は生活の一部。うまく対処する術を身につけよ」と説きます。この部分は大前氏のオリジナルな主張ではなく、別の人の引用なのですが、さもありなんと思いました。ロシアは官僚制度が近代化しておらず、給料が安いということで、汚職や賄賂を前提にシステムが成り立っているとのことです。
 これについては、ある程度乙も知っていましたが
2007.4.2 http://otsu.seesaa.net/article/37514559.html
こういうことで対ロシア投資が恐いといっていてはいけないようです。
 p.176 では、ロシアの最近の指導者を取り上げて、政治家としてどうなのかを論評しています。現代ロシア史とでもいうべきところであり、一つの見方として興味深いものがありました。
 p.224 からは「終章◆日ロ関係の未来図」が始まります。ここが一番投資に関連しているところでした。
 まず、長谷川毅氏の『暗闇』(中央公論新社)を取り上げ、北方4島がソ連に占拠された経緯について、戦後、アメリカがソ連に譲ったからだということが書かれています。乙は、こんな話はまったく知らなかったので、驚きました。それはともかく、大前氏はそういうことから日本が北方領土にこだわることはよくないとしています。そして、極東、シベリアを観光地として開発するべきで、そこに日本が投資すれば非常にメリット(日本にとって、かつロシアにとって)が大きいとしています。
 そんな簡単に「観光地」ができるのか、わかりませんが、大前氏の壮大なビジョンの一端をかいま見せてくれました。
 全体として、ロシアを広く眺め渡してその現状を記述しており、現代ロシア入門といった感じの本でした。

 なお、p.230 あたり、何回も「カムチャッカ」という表記が出てきます。また、本書中に何回も「ウォッカ」という表記もあります。しかし、正しくは、「カムチャツカ」および「ウォツカ」です。俗語としては「カムチャッカ」と「ウォッカ」もありますが、本で表記するなら正しい表記にするべきでしょう。ちょっと品位が落ちます。

ラベル:大前研一 ロシア
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posted by 乙 at 07:15| Comment(0) | TrackBack(0) | 投資関連本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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