架空の町の一企業に勤めるさまざまな人の考え方を通して、今の日本の「普通の人」が持っている雇用関係の感覚を例示しています。
著者のいうとおり、終身雇用は限界であろうと思います。しかし、ではどうするかというと、そこがなかなかの難問です。本書のエピローグなどで、雇用問題を解決した明るい日本が登場しますが、本当にそんなふうに解決できるのでしょうか。乙は、むしろ、問題解決ができないままに日本には暗い将来がやってくるように思えます。それくらいに人間は保守的であり、自分の周り(環境)を変えたくないと思うものだということです。
本書の主張は明解だし、書いてあることも身につまされるような話で、大変わかりやすいと思います。
でも、最後のほうの解決策を読むと、「こんなふうに問題が解決できるなら、苦労はいらないよなあ」と思ってしまいます。それくらい、雇用問題の解決はむずかしいということです。
何といっても、特権階級はそのような特権を手放したくないと思うものです。自らがそれを捨て去るなんてありえません。ということで、乙は、日本の将来は今と何も変わらない(したがって暗い)と予想するわけです。
言い換えると、そのまま次第に没落していく日本といったところでしょうか。
多くの人が「それではいけない」と思うようになって、はじめて、次の時代を切り開く(場合によっては「革命」などの手段を用いる)ことが可能になると思います。日本がそこまで踏み切れるかどうか。さて、本当にどうなんでしょうかね。
本書は、雇用問題を中心に、日本の将来を考える本です。新書なので気軽に読めます。
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城氏の論旨は明確です。
人口減少超高齢、クローバル・IT化社会の中、高度経済成長期のようなパイが拡大するわけでもなく、労働力の質の著しい向上が望めない以上、労働環境を自由世界標準とするべきだということです。
すなわち、現在の社会状況に符合しなくなった日本型雇用形態である長期年功序列型雇用を廃止すべく、@同一労働同一賃金の原則に立ち返り、A企業の解雇規制を緩和することで労働市場の流動性を上げ、Bそれによる負の問題は、セーフティネットを充実することで補充する、具体的には、「負の所得税」を導入する、とするべきだということです。
到って論理明確かつ正当な言説なのですが、乙様の仰る通り、これらを実現するのは非常に難しいでしょう。
それでも、あえてこのような改革を為すというならば、C国民のマジョリティーを扇動しうるオピニオン・リーダーの登場とD既得権益者の心の革命(価値観の変革)又は排除、が必要でしょう。
Cについては、政治家では(私が知る限り)未だいませんが、最近城氏のような柵のない30代の論客が多く登場し始めています。
Dについては、団塊の世代とその前後の世代の危機感が切迫する(させる)必要があると思います。
具体的には、夕張市、JALやギリシャのような事態の発生が我が国にあっても良いと(自虐的かもしれませんが)思います。
視野を雇用問題に絞ってはみたものの、結局は我が国の存亡に関わる問題にまで拡げて考慮せざるを得ないくらい、我が国の状況が非常に悪化しているのだろうと思う次第です。
CとDの必要性については賛成です。乙は、これが非常に困難であろうと考えたわけです。
しかし、もしかして日本の国家財政が破綻したりすれば、一気にそうなるのかもしれません。
まあ、そうならないように政府も国民も努力すると思いますが、そのような努力は、「現状維持」を目指すものであり、年功序列・終身雇用を守ろうとすることとほぼ一致するものと思います。
というわけで、乙は明るい展望が持てないように思います。