高橋氏が先生役で、竹内氏が生徒役で、話が進んでいきます。全体にとてもわかりやすい本です。
ただし、タイトルに「科学する」とうたっているのは誇大広告で、どちらかというと、高橋氏が自分の見方・考え方を開陳する面が強く出ています。
鳩山内閣の考え方を見事に描いています。基本的に、いくつかの原則でもって全部の政策が読み解けると主張しています。中にはやや強引と感じるところもありますが、そういう解釈でものを見ていくと民主党のやり方がきれいに見えてくるという点は否めません。
p.73 擁護する省庁は、財務省と経産省だけだといいます。一方、叩く省庁は、国交省、農水省、厚労省、文科省とのことです。単純なようですが、けっこうこんな見方で民主党の行動が説明できてしまうあたりはおもしろいと思いました。
p.91 では、子ども手当についての解釈です。一部引用します。
教育関係の補助金が文科省にそのまま入っちゃうと天下り団体に使われちゃうし、族議員も喜んじゃう。だから、直接、家庭に振り込んじゃえ、と。そうすれば天下り団体にも使われないし、文科省の力も弱くなるでしょ。文科省と対立している日教組にしてみれば、これは願ったり叶ったりだよね。
というわけで、複雑な議論の末に誕生した子ども手当ですが、民主党の支持母体の日教組を持ち上げ、文科省を叩くためだという解釈で、それなりに納得できてしまうあたりが驚きです。いや、実際のところ、こういう解釈でいいかどうか、乙はよくわかりません。しかし、国会などで行われる外向けの議論だけを聞いていても、今ひとつ、子ども手当の性格があいまいだし、何か、奥歯に物がはさまっているような感じでしたが、こういうふうにものの見方を示されると、不思議とモヤモヤが晴れる気分です。
p.119 のムダの定義なども、あっと驚くような切り口でした。自民党支持者のトクになるような政策は「ムダ」だということです。
ともあれ、本書は、正しいかどうかはさておき、スパッとした切り口を楽しむ本だと思います。
鳩山さんが総理大臣を辞任してしまって、もうこの本の賞味期限が来てしまったようです。もっと長く読まれるはずだったのに、こうなるとは、……。
なお、本文のところどころにコラムが出てくるのですが、これは成功しているとは思えません。本書の記述の流れ、つまりは読者の頭の中にできあがる流れがそこで断ち切られてしまいます。
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