福岡地方裁判所が、内々定の決まっていた学生に内定取り消しをした企業に対し、損害賠償を認めたというニュースです。
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/item/175815
http://www.asahi.com/national/update/0602/SEB201006020005.html
一般には、内定取り消しには、損害賠償もあり得ると思いますが、その前段階としての内々定については初めての判決だろうと思います。
乙は、就職活動(就活)についてはよく知らないのですが、内定は、一応就職する会社が決まったということで、学生側が断らない限り、入社は確実なものとして扱われると思います。10月ころに「内定式」などを行う企業が多いようで、この段階で、企業への入社は公に認められたものとなると思います。
会社が内定を取り消すとすれば、学生側は大変な事態になります。学生側で他の内定先を断ってしまった例もあるでしょう。(むしろ、それが普通かもしれません。)したがって、内定取り消しに対して会社側がしかるべき損害賠償をするのも当然でしょう。
一方、内々定は、内定の前段階という意味です。このままであれば、内定に進むものとして扱われますが、きちんと(公に)約束されたものではないということでしょう。
今回のように、内々定の取消で損害賠償が認められるとなれば、内々定は限りなく内定に近いものとして扱われます。
これがどういう影響を与えるでしょうか。
まずいえることは、会社側が内々定を出すことに慎重になるでしょう。一度出したら、取り消せないとなれば、初めから出さないということになりがちです。つまり、就職戦線は今まで以上に厳しいものになります。
内定を出しても、入社が確実ではない(学生が大学院に進学したり、いろいろなケースがある)ことから、内定を出すのは採用予定数よりも多めでしょうが、その数をしぼるのが企業側の当然の判断です。内々定についても同じです。
結婚の約束にたとえてはいけないかもしれませんが、きちんとした約束としての結納を交わせば、その段階で両家の親族などに婚約の事実が知れ渡り、その後の約束の破棄は損害賠償の対象です。しかし、結納の前は、本人同士(あるいは双方の親を含めて)の口約束段階であり、社会的には、損害賠償の対象にはならないと思います。
今回の話は、結納前でも婚約破棄が成立するというわけで、簡単に「結婚」を口にできなくなったことに相当します。
乙は、福岡地裁の判決に大いに疑問を感じます。
こんにちは。
私個人も気になって判決文を探して読みました。(福岡地裁のHPから「内々定」で検索すると出てきます。)
結論から言えば、労働契約締結過程における信義則に反しているから損害せよ、という判決でした。
内々定の取消が不利益というより、会社の対応が社会通念上不誠実であったという感じです。
アップされている新聞記事の文面からは内々定の取消が問題視されている感が目立ちますが、実際は信義則という至って普通の判決内容でした。
福岡地裁のHPからの検索では、うまくいきませんでしたが、判例検索システムを利用すると、当該判例にたどりつくことができました。
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20100611155526.pdf
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20100611161824.pdf
の二つがそれです。
乙が読んだ限りでは、やはり「内々定」が労働契約を成立させているということが主張されており、新聞記事が言うように「内々定の取消」が問題となり、損害賠償が認められたという要約でいいように思いました。
乙の感覚では、本文中に書いたように、この判決は学生の就職活動(企業の新規学卒者採用活動)に大きな影響を与えると思います。
たとえば、内々定について、企業側が文書を出さないで、完全に口約束だけにするなどということは容易に考えられることです。
まあ、それよりも、内々定という形式を避けるほうが普通だと思いますが。
「結納の前は、本人同士(あるいは双方の親を含めて)の口約束段階であり、社会的には、損害賠償の対象にはならない」というご見解は誤りです。
結納以外にも、婚約したことを証明できる事実(例:結婚式場予約、新居の賃貸借契約、結婚指輪の購入等)があれば、「正当な事由」無しに婚約を解消した場合、損害賠償の対象になるようです。
最近は結納をせずに結婚するカップルもかなり多いので(我が家もそうでした)、結納の有無を損害賠償の要件とするのはかなり無理があると思います。
ちょっと話をはしょりすぎました。
おっしゃるとおりだと思います。
失礼しました。