韓国の現状を描きます。著者の九鬼氏は韓国在住の日本人起業家だそうで、韓国語に堪能だということですから、韓国の現状を余すところなく記述できるのでしょう。
第1章「迷走する教育熱と受験戦争」では、韓国の過熱した受験戦争を描きます。高校の卒業生の84%が大学に進学するというのですから、すごいものです。そして、親を巻き込んで大変な戦争が起こっています。塾に通うために、有名塾の近隣のマンションを買って引っ越す(そして受験が終われば売って引っ越す)などと聞くと、「何もそこまでしなくても....」と思ってしまいます。子供たちの塾も、日本では考えられないくらいの長時間教育をしていて、これでは韓国の子供たちがかわいそうに思えます。まあ長時間だから深夜に子供たちが町を歩くことになり、だから塾の近くにマンションを買う必要がある訳なのですが。
海外留学も、大学からというわけではありません。小学校からの留学も普通のことだとのことです。
一方で、大学では休学者が続出しているとのことですし、大学の新卒者の正規雇用者が2割しかいないという就職難です。韓国はどちらを向いて走っていくのでしょうか。
第2章は「壮絶な企業サバイバル」で、韓国企業の特徴を描いています。一言でいうと、オーナーがきわめて強いということです。どんどん従業員をクビにします。鶴の一声で会社を動かします。スピード経営といえばかっこいいですが、そういうワンマンは、反面で失敗のリスクを抱えているともいえます。非正規職者の比率が日本の2倍もあるとのことです。こういうことで会社の経営はうまく行くものなのでしょうか。長期的に見て、どうなんでしょうか。日本も今後はこういう方向に向かうのでしょうか。
第3章は「ネット先進国の光と陰」です。日本よりも広まっている韓国のネット事情ですが、一方では、ネットで広まったデマで女優が自殺したり、ネット発信のデモや不買運動が起こると聞くと、何か、良識に欠けるように思えてなりません。韓国人は熱しやすくさめやすいのでしょうか。
第4章は「人口構成急変の歪み」です。日本以上の少子高齢化が進行中です。農村でもさまざまな問題がありますが、国際結婚が半分もあると聞くと、大量人身売買のように思えてきます。韓国のあり方に韓国人自身がNOといっているように思えます。
第5章は「分裂する韓国社会」です。韓国の中の対立を描きます。特に問題になるのが地域対立です。全羅道と慶尚道の対立などは特に根深いものがありそうです。このようなことでは、国としての統一性にも疑問が出てくるでしょう。
本書は、このような五つの観点から韓国の現状を描き出します。
韓国は、サムスンなど、すばらしい勢いで成長している企業があるわけですが、その内実を知ってみると、いろいろな問題を抱えていることがわかってきます。投資先の国としてみた場合、必ずしも全面的に明るいわけではないようです。
本書は、韓国人もあまり語りたがらないようなところを描いており、韓国に関わる人にはおすすめの本です。
参考記事:
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/1706
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