「国家破産」以後の世界のあり方を記述している本です。もう「日本は詰んでいる」というわけで、国家破産を前提にした本です。
Part 1 では、政府が発表した文書(内閣府(2005.5)『日本21世紀ビジョン』国立印刷局)をもとに、日本が破産するようすが描かれます。破産は政府も認めている日本の将来像だということになります。日本が破産してどうなるか。p.042 に明記してあります。@経済が停滞縮小し、優れた人材が外国に流出する。A官が民間経済活動の足かせとなる。国債価格が急落し財政破綻する。増税のみに依存した財政再建で個人および企業の税負担が増える。Bグローバル化に取り残され、国際政治に受け身になり、発言力が低下する。C将来に希望が持てない人が増え、社会が不安定化する。社会的なつながりを欠いた人が増加する。大都市近郊地域がゴーストタウン化する。
というわけで、まことに暗い社会になります。
郵貯・簡保のカネも、財政投融資という形で官僚が勝手に使ってしまって、今や不良債権の山だということです。取り付け騒ぎが起こったら、政府はどうするのでしょうか。お札をどんどん印刷すればいいという問題ではないはずですよね。
Part 2 では「国家破産」以後の社会が具体的に記述されます。グローバル化するのだから、日本人の賃金が下がるのは当然だという説明がされます。説得力があります。
Part 3 から「格差社会」論議が始まります。以下、Part 4 で「階級」について語られ、Part 5 では日本の「階級社会」が描かれ、Part 6 では、それと対比してアメリカの「学歴階級社会」が描かれます。Part 7 では、世界規模で「下流転落」現象が起こっていることを述べ、Part 8 では、どういう人が這い上がれるのか、どういう人が這い上がれないのかが説かれます。その後に「ある実業家の回想」と題して、役人がいかに日本をコントロールしてきたか、それによって民間がいかに苦労してきたかが述べられます。旧運輸省と対立しながらヤマト運輸で宅急便を作り上げた小倉昌男氏の苦労の話と重なる部分があります。
ここまで完璧に国家破産後について書かれてしまうと、乙はどうしたらいいものか、悩んでしまいます。日本で投資などしている場合じゃないだろうという声が聞こえてきそうです。このままではいつかは日本が破産するので、それを前提にした生き方を考えておかなければならないようです。
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