とてもわかりやすい年金の本です。
「はじめに」がおもしろいです。なぜ年金の本はむずかしいかという疑問から入ります。それは、厚生労働省のお役人が、自分たちへの批判を避けながら、国民を情報操作するために書いているからだと喝破しています。
本書は、そうではありません。鈴木氏が日本の年金の全体像をわかりやすく(お役人とは別の目で)説明しようとしているからです。
まさに新書にピッタリの内容でした。
本書は、18の質問に答える形で書かれており、著者の鈴木氏が真正面からそれぞれの問いに答えようとしているため、わかりやすくなっているのだと思います。
p.64 では、年金の国庫負担分について「社員旅行の積立金」のようなものと説明しています。幹事が「社員旅行に来ないと積み立てた旅費を返さないよ。来ないと損だよ」と言ったら、普通の人なら怒り出す、社員旅行に来ない人には積立金を返還するのがスジだと書いてあります。
しかし、乙はそうは思いません。旅行に行かない人には積立金を返還する必要はなく、その分は、旅行に行った人が、自分の積み立てた分よりも少しだけ豪華な旅行にして楽しんでかまわないのではないでしょうか。そういう積立金を個々に返還していたら、社員旅行に行かない人がさらに増えて、仕組みそのものが崩れると思います。
p.118 では、基礎年金を税方式にするべきだという話の続きで、なぜ年金を税にしないのかを説明しています。ひとことで言えば、年金特別会計をにぎっている厚生労働省のお役人たちが、天下りなどの自分たちの権益を手放そうとしないためだとしています。この考え方が本当かどうか、わかりませんが、そう考えると、さまざまな年金問題にからむゴタゴタがすっきり見えるようになることは事実です。乙はこの説明に納得しました。
p.140 では、基礎年金の25年ルール(年金保険料を25年間払い続けないと受給資格がない)を10年とかに短縮することに意味があるかを論じています。実は意味がないということです。乙は、25年は長すぎると思っていたので、短縮案に賛成だったのですが、ここの説明を読んで、そう簡単な話ではないと気づきました。単純に言えば、短縮案は低年金の人を増やすだけだということです。意外な結論でした。
p.79, p.150, p.226 には、それまでに論じてきたことを1ページにまとめたところがあります。頭の中を再整理するのに便利なように思いました。一気に読む場合は問題ないのですが、少しずつ読み進める場合は、こういうのがあるとありがたいです。
そして、巻末には、もらえる予定の年金額を記載した表が付いています。生まれ年だけでなく、共働きか専業主婦か、月収はいくらか、など条件を変えて複数の表になっていますので、多くの人が自分の年金を概算することができると思います。これは便利です。
乙は、自分の年金の予想額を知って、意外と多いことに驚きました。たいていの人は、こんなことも知らずに生活しているものでしょう。
もっとも、いざ、年金をもらうころになったら、制度の「改正」があって、実質的には受取額が減ってしまうものと覚悟しています。「100年安心プラン」なんてウソで、たぶん10年も安心できないものと思っています。
しかし、仮に年金が2割減となっても、日常の生活には困らない程度になりそうです。
老後の生活を考える上でも有益な本でした。
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これも、なるほど、の意見だと思います(^^)