預金封鎖があるとしたら、どんなふうになるのか、それを(日銀の立場から?)冷静に描いています。単なるパニック本ではありません。預金封鎖が問題なのではなく、それに続く財産税が問題なのだというのは、当然ですが、一方では、そういうことよりもハイパーインフレのほうが可能性が高いようだと述べています。乙も同感です。
乙がおもしろいと思ったところを3点、書いておきます。
p.57 「(国債の)支払い停止は行われる可能性はないのか。一つだけある。日本銀行が直接引き受けた国債を政府が支払い停止にするのだ。国債全部について支払いを停止すれば、ほとんどの金融機関は破綻するであろう。しかし、日本銀行が保有するものだけに限れば、金融機関の破綻は避けられる。」
とてもおもしろい発想です。こうして、日本銀行が損をして、それでいいのかどうか、乙にはわかりませんが、いやはや奇抜な手があるものだと思いました。
pp.92-94 では、預金封鎖を行うにあたって、原則的に国会の審議を経なければならないということが述べられています。しかし、それでは預金の引き出しなどが行われてしまうので、「預金封鎖」にならなくなってしまいます。それ以上に、財産税の実施が大問題です。日本には「租税法律主義」という原則があり、法律に定めない租税を課すことは憲法84条違反になるので、実施できないと書いてあります。つまり、今の憲法下では財産税の実施はきわめて困難だということです。技術的には可能でも、法律的に不可能というわけですね。
終戦直後の預金封鎖と財産税は、旧憲法が実質的に機能しなくなり、新憲法が公布される前で、GHQの強大な権限をバックにして行われたのであって、今の日本では、そういう状況にないから、過度の心配は無用だというわけです。これを聞いて、乙は少し安心しました。
p.208 以降では、預金封鎖への対処法が述べられています。その最初に「円」を外貨預金するという方策が書かれていて、乙は驚きました。こんな方法があったのですね。外国の銀行に(マルチカレンシーの)口座を開設し、その「円」の口座に自分の財産を預けておくというわけです。こうすると、日本の預金封鎖などの影響は一切受けないことになります。しかも、外貨で預金しているわけではないから、両替手数料はかからないし、為替リスクもありません。かかるのは(日本との往復の)送金手数料だけです。日本の銀行に送金できなくなってしまったら、現地に行って直接現金を円で下ろせばいいということになります。これは一番安全な(ただしローリスク・ローリターンな)方法だと思います。
それにしても、預金封鎖と財産税がないとなれば、財政赤字を解消するために、これからの日本に残された道はハイパーインフレしかないということになりそうで、いやな話ですね。
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