本書の基本的な主張は、現在の大不況は日銀が引き起こしたものだということです。言い替えれば、日銀の考え方・行動のしかたは間違っていると批判しています。
どんなところかというと、ひたすらインフレを避けようとし、デフレでいい(デフレにも「良いデフレ」がある)とするところです。
本書を読むと、まあそうかもしれないと感じるのですが、それにしても、すべての責任を日銀に押しつけて、それで終わりというわけにもいかないでしょう。日本国を運営しているのは日本政府です。その代表が総理大臣です。だとすれば、政府や総理の考え方・行動のしかたも大事なのではないでしょうか。
日銀は、「政府からの独立性」を根拠にして、政府の干渉を受けないようにして、自らの政策を貫徹しようとしているという著者の見立てはいいのですが、一方では、もう少し大局から見れば、やはり、政府の責任というのも無視できない部分があるはずで、本書ではそちらはあまり描かれていません。
あえて、政治を切り離して、日銀に焦点を当てることで、今の日本の状況を違った観点から見ようとしたのかもしれませんが、そちらも含めて眺めた方が良かったのではないでしょうか。
本書は、最後に「第5章 日本は必ず復活する」があるのが救いです。もっとも、ここに書かれている内容は、すでに誰かがどこかで述べているようなことで、あまり新鮮味はありませんが。
日本の現状を憂える人は本書を読んでおいて損はなさそうです。
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