藤巻氏の主張は簡単でとても痛快な本です。
伝説のトレーダーが今後の金融の動向を見据えて、自分の資産をこのように運用するとはっきり書いています。
・そのうち日本にインフレが来るから、長期固定金利でたくさん借金をする
・その金を日本株と不動産に投資する
・今後円安になるから外貨で資産を運用し、円はなるべく持たない
端的にいうと、以上のようなことになります。なぜこう考えられるかについては、この本を読んでください。藤巻氏が根拠を示して論じています。(しかし、もちろん、この予測があたるかどうかはわかりません。)
この他に、この本では、米国経済、中国経済、商品市況(石油・金)、日本の増税問題、日本のものづくり、米銀と邦銀の比較など、幅広いテーマを論じています。これらの全体の概観によって、藤巻氏は上述のような見通しを得ているというわけです。
乙がおもしろいと思ったことは、p.33 に書いてあります。藤巻氏はバブル崩壊直前に、いろいろな人と面会して、今後の展開を読み、次のようにしたと書いてあります。「私はマーケットの危うさを感じた。日本経済の転機を感じた。そこで株をすべて処分した。また、遅ればせながらの金融引き締めを予想し、債券もすべて売却したのである。」
つまり、伝説のトレーダーは、アセットアロケーションなどは無関係で、ある時は株に突っ込み、債券に投資し、またあるときはそれらを全部処分してしまうのです。市場への見通しがなければ、なかなかこうはできませんが、しかし、これはおもしろいです。乙も、こうありたいと感じています。事前に決めたアセットアロケーションにこだわるよりも、今はこれがいいと思ったら、そこに突っ込むというような投資です。これでは不安定だという見方もできますが、そうではありません。全資産を一つの金融商品に突っ込むようなことはあってはならないし、あくまで基本は分散投資です。しかし、なお、それぞれの配分割合にこだわることなく、適宜ダイナミックに運用先を変えていくというようなことが必要だと思います。
このようなダイナミックな運用は、伝説のトレーダーだからできるのであって、一般人には無理だという考え方もあるでしょう。しかし、そうでもないというのが乙の考え方です。自分自身で分散投資して、それぞれの運用先が現在どうなっているかを監視していると、自分の投資した金額の上下という形でいろいろなマーケットの動きが手に取るようにわかります。投資しないで外から眺めていても、実感がわかないでしょう。自分でわずかながらでも投資していると切実感が違います。乙には藤巻氏のような思い切った運用はできませんが、ある程度はダイナミックな運用を目指したいと思っています。
たとえば、乙は、今のところ、日本株も外国株も順調だと見ています。BRICs などはその典型でしょう。しかし、もう少し先には値下がりもあるでしょう。そういうときは、それに対応した動き(つまりファンドの解約や株の売却)をするつもりだということです。実際の動きに先駆けてダイナミックな運用ができればパーフェクトですが、それは無理だとしても、先行きが暗いときは投資しないという程度でも結果が違ってくるでしょう。乙が日本の国債に投資しないのもこの考え方によるのです。
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