http://diamond.jp/articles/-/10139
本来はNHK「追跡! AtoZ」取材班の執筆によるものです。「技術立国・ニッポンに赤信号? リストラされた日本人技術者が作る「高品質のメイド・イン・チャイナ」」という題名の記事ですが、驚きの技術流出が描かれていました。乙が驚いたことは二つありました。
第1に、50代のリストラされた日本人技術者が中国に行って、現地の企業の指導にあたっているという話です。日本の中では、リストラされた中高年技術者を新たに雇ってくれるところがないというのはその通りでしょう。技術者の側からすれば、食っていくためには働く必要があるし、そうなれば、中国でもどこでも働ければいいというのは理解できます。ただし、こうして、中国企業が日本の技術を盗み(ちょっと言い過ぎました。「導入し」くらいが穏当な表現でしょう)、それを利用して日本企業を打ち負かしていくのは、何ともやりきれない気がします。
こうして、ハイアールなどの中国企業は日本人向けの高品質の製品を安く大量に作って日本に輸出してくるのですから、迎え撃つ日本企業は非常に厳しいことになります。
とはいえ、中国企業の「技術開発力」も、一皮むけば、そこには日本人ありということですから、大したことないのかもしれません。しかし、こういう経営戦略を作り、実行し、成果を上げていく経営者のセンスはなかなかのものであり、あなどれないように思いました。
そして第2に、求職者の選考方法ですが、面接ではなく、レポートによる試験ということで、1週間以内に、ヒット商品を生むノウハウをまとめて提出するよう言われたとのことです。乙は、さらにうなってしまいました。実は日本人技術者さえも不要なのです。中国企業は無料で技術者からノウハウを手に入れることができるのです。
まあ、レポートだけでうまくいくとは限りませんから、たぶん中国企業は日本人技術者を採用するだろうと思います。しかし、契約期間は1年ごとの更新制だそうですから、中国企業としては、しばらく技術者を使ってみて、その人のもつノウハウを充分吸収し尽くしたと思ったら、その時点で技術者を放り出せばいいというわけです。これでは、技術者側としては、いくら給料が高くても、安心して働くことはできません。いや、それでも、国内に仕事がなければ、中国に行くしかないという現状が嘆かわしいわけです。
日本企業の海外流出に加えて、技術者の海外流出も無視できない状態になっています。
日本人投資家たちも、すでに日本企業だけが投資先でないと考えるようになってきています。資金も海外に流出しているというわけです。
この傾向が続くとき、日本に残るものは一体何だろうということになります。
日本の未来は、ますます暗いものにならざるを得ないように思えてきました。
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私も全く同感です。国も企業も同じですが、政策や経営の失敗を技術者に負わせるような事が平然と行われる世の中はどこか間違っているように思えて仕方ありません。
今回のエントリーのような事態は、中長期的にみると実は我が国にとっては良いことなのかもしれません。
米国の自動車、電化製品産業を代表する製造業は、80〜90年代にかけて我が国のそれらに席巻されつつありました。
もっとも、それとてそれ以前に我が国の技術者らが米国など先進国の技術をキャッチ・アップしたことで可能となったわけです。
これと同様の事態が現在当事者を変更して起こっているのだと理解している次第です。
米国らが日本に、日本が中国に・・・その手法の差こそあれ「技術の伝承(盗取?)」という意味では同じです。
しかしながら(ここからが問題で、)、米国らと異なり、我が国には構造的な問題が存在します。
それは、産業構造の転換を容易にしない法的規制や国民性です。
米国には、ハッカーが立ち上げたIT企業らが隆盛を極めることのできる包容力があり、衰退産業に取って代って現在リーディング産業として成長させる産業構造が比較的容易に転換する素地があるわけです。
それらの株式の時価総額は今や世界のTop10に名を連ねてます。
方や我が国では、衰退する製造業に代わるリーディング産業が生まれる予兆すらないのが現状です。
その要因のひとつが、おそらく我が国の国民性として現状維持や現在志向のバイアスが非常に高いことだと思います。
しかしながら、それでは日々グローバル化で世界が平準化する中では生き残れないと思うのです。
そうならないためには、そのようなバイアスを打破するしかないと思うところ、その方策としては、現在政治的な根本的な変革が期待できない以上、短期的に一度「諦める」ことも必要なのではないのか、一度リセットして出直すくらいの荒療治が必要だろうと最近思っています。
個人的には、やりうる手段を可及的になす覚悟です。
米国と日本の関係が、日本と中国の間に並行的に見られるというのはその通りでしょう。
しかし、日本企業が米国の技術者を引き抜いたかといえば、そうではないと思います。クルマも家電製品も自力で(日本人が各企業内で)開発した面が強いと思います。
乙は、中国がけしからんとまでは思っていませんが、こういう戦略をとってくる相手に日本が対抗できずに沈んでいく(ように見える)だけなのが残念なのです。
おっしゃるとおり、日本人の国民性の問題なのかもしれませんね。
教育の方面でも、いわれたことを素直に受け止め、覚え、従うように「しつけ」ているわけですから、そうでない人材を育てるのはきわめて困難です。
>>資金も海外に流出しているというわけです。
>>この傾向が続くとき、日本に残るものは一体何だろうということになります。
海外投資から得るリターンが日本に入ってくるではないですか。
問題ないと思いますが。
リストラされた技術者のレベルについては何とも言えませんが、今の雇用情勢や経済状況を考えると、かなりの力のある人でもリストラの対象になることがあるように思います。
日本は(特に中高年の)人件費が高く、企業としても抱えきれなくなってきているように思われます。
また、海外投資からのリターンが入ってくるのはその通りですが、日本が海外投資で食っていくというのは、どうにも居心地が悪いように思います。このあたりは、価値観ないし感覚の問題なので、うまく説明できないのですが。
可能性はありますけれど、本当に力のある人なのかどうか?
データを私が持っていませんから、水掛論になってしまいますね(^^)