フリーランチ投資家というのは、自分であくせくしなくても、お金が勝手に稼いでくれるような、そんな投資家のことです。では具体的にどうするか。ここで長期国際分散投資の話が出てきます。
岡崎氏は、過去のデータ20年分を集め、日本と外国の株と債券の値動きをいろいろ分析し、それに基づいて、これからこうするといいという処方箋を提示します。それが、日本株(あるいは外国株)3割と外国債券7割という配分比なのです。さらに、外国債券は7年程度の長期運用を目指す(つまり7年はじっと保持する)ということになります。なぜ7年か。これは過去のデータが教えてくれた結果です。7年持っていることが一番いいのです。それに対して、日本株は数ヶ月単位の短期投資がいいということになります。これもデータから導かれる結論です。このあたりの議論は、本書中のデータを見ながらでないと、納得しがたいかもしれません。
デイトレードなどはやってはいけないのは当然です。また、日本の国債には目もくれません。
この本全体を通して、過去のデータと今の状況に応じて、最適な戦略を描こうとしている点に好感が持てます。
たとえば株の売買にしても、p.157 で、上昇局面では3〜4ヶ月を目途として2割程度上がったら利益確定し、下降局面では損失の確定を下落の2ヶ月目に行うなどといった具体的な指針まで示してくれます。1ヶ月に1回の売買というスタイルですから、そういうスタイルでデータを見て、一番いい戦略を描きます。
いうまでもなく、上に示した処方箋(アセットアロケーション)も、現在(厳密には2005年4月の本書の執筆時)は当てはまりますが、今後しばらくしたら当てはまらなくなるでしょう。しかし、本書を理解しておけば、7年後どう振る舞えばいいか、おのずとわかるような気がします。(再度、そのころに出る岡崎氏の著書を買って読むのでもいいと思いますが。)
乙は、この本に賛成する部分もたくさんありますが、株の値動きを月1回しかチェックせずに、数ヶ月単位の短期投資をするという記述は疑問を感じました。数ヶ月の間には、かなりの株価の上下があるので、たとえば、売ると決めた後でも、1週間くらいようすを見て、その中の比較的高い時期を狙うようにしたほうがいいのではないかと思います。まあ、こういうチェックをこまめにしていくと、あくせくして忙しくなり、フリーランチ投資家にはなれないのですが。
乙は貧乏人根性丸出しですね。
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