全体が3章構成になっています。第1章「日本はなぜ不況なのか?――デフレ不況の経済学」、第2章「危機はいかに克服されるか?――危機克服の経済学」、第3章「これからの日本経済はどうなるか?――国家再建の経済学」といった内容です。
三つの章のうち、第1章と第2章は、新書とはいえ、かなり内容が高度で、読みにくく、正直言って乙はお手上げでした。専門用語がバンバン出てくる感じです。
2点だけ、コメントしておきます。
p.082 には図が1枚入っています。図11です。これが本文で参照されていません。そして、図の中に「Nagaku niopebu」と書いてあるのですが、この意味がわかりません。
BIS について、p.127 で説明されています。しかし、p.121 ですでに「BIS」という言葉を使っています。初出のところで説明するのが当然でしょう。
他にも問題はあると思いますが、こういう書き方が本書を読みにくくさせていると思います。
それらに比べて、第3章は内容がわかりやすく、おもしろいものでした。第1章・第2章とずいぶん違う感じです。もしかしてどこかの講演をもとにして書き改めたのかもしれません。それぞれで聴衆のレベルが大きく異なっていたかのようです。
第3章は、大きく三つの部分からなります。
第1に、「日本経済はどうなっていくか?」ですが、民主党の新成長戦略や日銀の現在の政策では、日本経済がうまく回っていかないことを数字をあげて説明しています。経済財政諮問会議の廃止などは非常に乱暴なやり方だったことがわかります。
p.144 では、「国の政策では、極論すればJALが倒産したなどの「滑った転んだ話」よりも、マクロ経済政策のほうが遙かに重要です。」と述べています。でも、現実の政治家はマクロ経済政策についてはわからないから、「滑った転んだ話」に傾いてしまいます。まさに日本の政治の問題点の一つです。ちゃんと経済学的知識を持っている人が舵取りをしないと、日本はどこに向かってしまうか、心配になります。
第2に、「日本はなぜ正しい金融政策を行えないのか?」です。ほぼ日銀批判になっています。具体的に、誰のどういう発言が問題なのか、それはなぜかを指摘していて、おもしろいと思いました。著者は日銀が量的緩和で資金を供給すればデフレから脱却できると主張しています。
第3に、「日本の未来はどうなるか?」ということで、日本経済(日本国)は破綻しないということと、亀井氏が強引に進めている郵政再国有化がいかに間違っているかを論じています。前者については、日本の債務残高は大きいけれども、保有している資産もまた大きいので、差し引きを(ネットで)計算すれば、債務残高はGDPに対する比率で見て大したことないということです。乙は、こういう見方も可能だとは思いますが、毎年のように政府が赤字予算を組んで、しかも支出先に変なところ(失礼!)が多いのでは、いつかは日本国としておかしくなりそうに思います。それに国の資産が本当にそれだけの価値があるのか、ちゃんと調べてみると、実は帳簿ほどには資産でなくなっているのではないか(帳簿の金額ほどの価値がなくなっているのではないか)という疑いもあります。乙は、高橋氏のように楽観的ではいられません。
ともあれ、第3章だけでも読む価値はありそうに思います。高橋氏はあちこちを切りまくって、歯切れのいい話を展開していますですから、読んでいておもしろいのです。
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