「一生困らないお金を、のん気投資で手に入れる」という副題が付いています。
この本の主眼は第2章にあります。これから10年の株価・金利・為替の動きを明確に予想し、グラフのような形の模式図で表しています。このような将来を想定すれば、おのずと取るべき戦略はこうなるということで、それも解説されています。いやあ、普通の人ではなかなかここまでは書ききれないでしょう。しかし、岡崎氏はあえて書いてしまいました。この章が本書の結論部分です。
第3章は、なぜ今後10年間の動きがそうなるかを解説したところです。過去のデータを利用して分析しています。現実世界での経済的な動きや政治などとの関連も踏まえて、ともかくこの考え方で当てはまるのだという話になっています。これを読むと、第2章の主張が説得力を持ってきます。最終的な結論----すべては米国の経済・米国の景気が動かしている----も、なるほどと思います。何か、この本で日本経済の動きのすべてが理解できたような気分になります。
この二つの章以外は、あまり新規性はありませんが、乙は pp.221-231 の岡崎氏のおばあさんの話がおもしろかったです。おばあさんは、ずっと倹約生活をし、預貯金一本槍で生活してきて、死ぬときには 4000 万円を残したそうです。そういう生き方が昔の日本人には多かったのですね。しかし、資産運用を心がけていたら、もっと違った人生を送ることができたように思います。それはともかく、岡崎氏はそういうおばあさんにも資産運用についてわかってもらえるようにこの本を書いたとのことです。この気持は納得できます。
乙も、妻と息子に資産運用についてわかってもらえるようにこのブログを書いています。
http://otsu.seesaa.net/article/14732420.html
今から10年後に、日本経済がどう動いたかを完全に把握してから、この本を読み直すことがあってもおもしろいかもしれません。経済は、必ずしも、予想したとおりに動くとは限りませんが、なぜそのような予想外の変化が起こるかについても本書中で述べられていますので、充分参考になるでしょう。
この本は、長期投資を考えている人には必読のおすすめ本です。こういう長期的展望を持って、身近なことに惑わされずに、投資を続けていきたいものです。
乙は15年の投資を考えていますので、本書の考え方に共感を覚えました。
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