題名に引かれて注文した本なのですが、読んでみると、投資に関連する本とはいいにくいような気がします。
第1章「政府は貧乏、でも国民はとてもお金持ち」は、日本経済を冷静に眺めて、結論として国家破綻にはならないということになります。ちょっと日本が理想的に描かれすぎている感じがしなくもありませんが、東京と大阪の町工場の技術水準を高く評価するところなど、納得できると思います。
労賃が安い国で、誰でも作れるような定型的なものを作っているのが今の中国であり、単に人件費が安いことだけが取り柄なのに対し、日本は、どんどん技術をつぎ込んで、新しいものを作っていく。そういう体制になっているから、中国などが伸びてきても、日本は独自の優位性を発揮し続けるというわけです。
で、国家破綻の際に問題になる大量の国債の問題ですが、増田氏は低金利の借り換え債や永久債などという手もあるということを紹介しています。永久債(償還期限がなく、利息だけをずっと払っていく債券)というアイディアは乙には初耳でした。しかし、書かれていることを読むと、これはこれでいいアイディアではないかと思えてきます。永久債が仮に 3.5% の利付きだとすると、約30年で元本分が返ってくる計算になり、それ以降は利息だけがずっと付いてくることになりますから、元本が償還されなくても、これはこれで投資価値があります。(ずっと日本政府が存在し続けると信じられる場合に限りますが。)
第2章は、「少子高齢化は怖くない」ということで、通説に反するけれども、これもまたおもしろい説です。投資とは直接関係ありません。
第3章は、2050年の日本を予想するといった内容で、乙は、こういう記述が好きになれません。未来予測は、いろいろな条件を前提にした予想にならざるを得ませんが、それらがあまりにも不確実であるし、今予想されていない事態(大事件や革命的新製品の発売)が起これば、社会のあり方が変わってしまうでしょう。そういうもろもろのことに目をつぶって未来予測をしてもあまり意味がないように思います。
というわけで、読むべきは第1章だけかもしれません。しかし、増田氏の主張は菊池氏の著書
http://otsu.seesaa.net/article/16553677.html
にも通じる話であり、明るい気分になれる本です。
なお、p.19 には、日刊工業新聞2005年10月3日の引用ですが、日本の200社に対してチャイナリスクを感じる点についてたずねたアンケート結果が載っています。次のような順番です。()の中は、それを選択した企業の数です。
政府の突然の政策変更(111)
技術・ノウハウの流出(95)
元の切り上げ(84)
電力などインフラ未整備(79)
反日感情(66)
乙は、チャイナリスクというと反日感情が一番かと思っていました。
http://otsu.seesaa.net/article/16709943.html
しかし、そうではないのですね。企業の経営者に対するアンケートですから、中国株の投資家とは違った反応をするのでしょう。ここには、中国に直接進出することを前提にする場合の企業の本音が出ているように思います。
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