朝倉氏はモーニングスター社の代表取締役ですから、そのウェブサイトを使って投資信託を選ぶ方法が詳しく書いてあります。
ほぼ投資家の観点から書かれた本です。ここが一番いいところです。何と言っても、普通に投資信託の情報を得るときには、証券会社や銀行など、「販売側」の人からになるわけで、それでは、本当に投資家の役に立つ投資信託は買えません。マネー雑誌などでも、やはり広告の出稿側の声を無視することはできないでしょう。こういう本こそ、投資家の役に立つ本だと信じます。
第1章は、「投資信託はそんなに甘くない」ということで、投資信託の特徴を再検討します。投資信託の最大の盲点はコストだと書いてあります。そうなんですよね。乙が購入した各種の投資信託については、このブログでいろいろ述べてきましたが、それぞれのところでコスト(各種手数料)を明示するようにしてきました。投資信託では、なるべく低コストのものを選びたいと考えてのことです。
第2章は、「投資信託選びの下準備」ということで、長期目標を立て、目標利回りを決め、それから資産配分を考えるという真っ当な方法が説明されます。
第3章は、「投資信託はこう選ぶ!」という章で、さまざまな投資信託のタイプ別に選び方がきちんと書いてあります。なるほど、こういう選び方をするのだったかと思わせる記述がたくさんあります。
中でも、コア(中核)投信に集中して購入するという方針は、なるほどそうだと思いました。日本株に投資するコア投信の場合は、インデックスファンドか、100 銘柄以上に分散投資しているものを選ぶということです。
乙は、こういう方針を知らずに投資信託を買い始めたので、それぞれに適当に選んでしまったのでした。乙の場合は、数年経験してみて、それぞれの投信の特徴などを理解してから、ふさわしいものに追加投資するようなことで運用しようと思ったのでした。しかし、そうではなく、主たる投信(コア)を決めてそこに集中投資し、お好みで個別のテーマや地域などに投資する投信(本書ではサポート投信と呼んでいます)を買ってもいいのですが、それは配分比を少なくするべきだということです。確かに、こういう方針がいいですねえ。しかし、それがいいとわかるまでは、乙のように試行錯誤してしまうのが普通なのではないでしょうか。そもそも何をコア投信とするか、最初は判断ができないでしょう。投資信託を購入するより前にこういう本に巡り会うことができる人は少ないように思います。
第4章は、「購入後のチェックと売却」で、ここまできちんと書いてあれば(その通りにすれば)投資信託によるトラブルはかなり避けられるように思います。リバランスの話もきちんとしています。
ちょっと意外なのは、p.243 に出てきますが、「投信のパフォーマンスがよすぎる場合も売却の候補になる」ということです。確かに、コア投信としては、そういう考え方も成り立つでしょうね。しかし、サポート投信ならば、これは嬉しいことであり、特に売却しなくていいわけです。
また、pp.245-246 で、運用期間が来る前に目標金額を達成したら、すべての投信を売却して、預貯金などにしておくという話も意外でした。乙なら、一部の資産だけは売却せずに、運用期間がすぎるまで保有し続けるように思いますが、それではダメなのだそうです。
乙は、投資信託が好きです(自分の好みに合ってます)が、いろいろ購入する前にこの本を読んでいたら、購入方法が相当に違っていたことでしょう。それくらいインパクトのある本です。本屋さんや図書館に並んでいる投資信託の本など、この本よりもはるかに低レベルで、役に立たないことやすでにわかっていることが書かれているのが普通です。
投資信託を運用方法のメインにしようとする人ならば、ぜひ本書を一読するべきでしょう。
乙は、古本屋で買ったのですが(こんな新しい本が古本屋で何と半額で売られているんですね)、買ってよかったと心から思いました。
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僕も投資信託中心の運用をしていますが、この本は良書だと思いました。